
ITERのブランケット初期組立に向け、QSTが新たなツールの開発・調達を担当
~遠隔保守で培った技術を生かし、日本のITERへの貢献をさらに拡大~
量子科学技術研究開発機構(QST)はITER機構との調達取決め(Procurement Arrangement: PA)に基づき、ITERのブランケット初期組立に用いられるツール類の製作を進めています(ITER Japan News 第171号 参照)。その後、ITER機構による計画の見直しにより、新たに仮設プラグの設置・取り外しに用いる溶接・切断ツールが必要となりました。これを受け、QSTは2026年4月23日、これらのツールの開発・調達に関するタスク取決め(Task Agreement: TA)をITER機構と締結し、同年6月11日にプレス発表を行いました。
ブランケット初期組立とは
ブランケットは、ITERのプラズマを取り囲むように設置される機器で、プラズマに直接向き合う「第一壁」と、その背後で中性子を遮蔽する「遮蔽ブロック」から構成されます。
ITERでは、建設時に真空容器の内部へブランケットなどの機器を取り付けていく「初期組立」が2032年から数か月かけて実施される予定です。これは、2034年のプラズマ運転開始に向けた重要な工程の一つです(図1)。
ブランケットの組立では、大型機器の搬送・設置だけでなく、配管の溶接や切断、固定ボルトの締結など、さまざまな作業が必要になります。QSTはこれまで、ITERのブランケット遠隔保守システムの開発を通じて、こうした作業に必要となる技術を培ってきました。
図1 ブランケット初期組立作業
なぜ新たな溶接・切断ツールが必要になったのか
ITERの初期の運転である研究運転では第一壁の代わりに、冷却配管を持たない「仮第一壁」を使用する予定です。そのため、遮蔽ブロック側の冷却配管が開放された状態となり、真空容器内の気密性を確保するための対策が必要となります。
当初は、真空容器上部ポート付近で配管を封止する計画でしたが、2025年10月の検討を経て、遮蔽ブロック内の冷却配管に仮設プラグを設置して封止する方針へ変更されました(図2)。
図2 仮設プラグによる閉塞位置
これに伴い、仮設プラグを配管に取り付けるための溶接ツールと、仮設プラグを取り外す際に使用する切断ツールが新たに必要となりました。
これらのツールには、狭い配管の内部から溶接・切断を行ったり、切断時に切粉を真空容器内に落とさないなどの高度な技術が求められます。ITER機構は、QSTがこれまでに培ってきた技術をこれらのツールの開発・調達に応用することで、短期間かつ低コストでの実現が可能であると判断し、QSTに協力を要請しました。これを受けて、ITER機構とQSTは今回のTAを締結しました。
QSTが開発・製作する2種類のツール
今回のTA主な対象は、以下の2種類のツールです。
• 仮設プラグ溶接ツール
遮蔽ブロック側の冷却配管に仮設プラグを取り付け、溶接するためのツール(図3)。
• 仮設プラグ切断ツール
仮設プラグの溶接に問題が生じた場合などに、再溶接を行うため、配管を切断するツール。
図3 仮設プラグ溶接ツール
QSTはこれらのツールについて、設計、製作、工場での検証試験を行った後、2028年中にITERサイトへ搬入し、2029年にサイト受入試験を実施する予定です。
日本のITERへの貢献をさらに拡大
QSTはこれまでPAに基づき、ITERのブランケット遠隔保守システムに加えてブランケット初期組立用のボルト締結ツールや配管溶接・切断ツールなどの開発・製作を進めてきました(図4)。
図4 開発中の初期組立用遮蔽ブロック配管同軸コネクタ溶接ツール
今回のタスク取決めにより、従来のPAでは対象外であった領域にも取り組むことになり、日本のITERへの貢献範囲はさらに広がりました。今後もITER主要機器の組立への貢献をさらに拡大するとともに、将来の核融合炉の建設・保守を支える技術や知見の蓄積につなげていくことが期待されます。
プレスリリースの詳細は、QSTプレスリリース(2026年6月11日発表)をご覧ください。
また、遠隔保守機器の詳細については、「遠隔保守機器」をご覧ください。