English
トップページ  >  一般の方へ  >  ITER Japan News  >  グラフニューラルネットワークを用いた核融合装置向け遠隔保守システムの設計探索

トップ画像

グラフニューラルネットワークを用いた
核融合装置向け遠隔保守システムの設計探索

 2026年7月23日~24日、北海道大学学術交流会館にて開催された第16回核融合エネルギー連合講演会において、炉工学基盤研究開発部遠隔保守機器開発グループ 岩本拓也研究員が「グラフニューラルネットワークを用いた核融合装置向け遠隔保守システムの設計探索」で若手優秀発表賞を受賞いたしました。

若手優秀発表賞を受賞した岩本拓也研究員

図1 若手優秀発表賞を受賞した岩本拓也研究員

 核融合装置向けの遠隔保守システムには、重量物を扱う能力や狭い空間での動作など、多様な要求を同時に満たすことが求められます。しかし、ある性能を向上させるために機構や部品構成を変更すると別の性能が損なわれる場合があるなど、設計パラメータ同士が複雑に影響し合うため、要求を満たす設計を見つけ出すことは容易ではありません。また、機構構成や部品配置の組合せは膨大であり、人間の設計者だけで幅広い設計案を検討することには限界があります。そこで本研究では、機械学習と最適化アルゴリズムを組み合わせ、要求条件を満たす有望な設計候補を効率的に探索するための技術開発に取り組みました。

 開発した手法では、まず機械部品やロボットの構成を、どの要素がどの要素とつながっているかを表現する「グラフ」として表現します。これにより、機器を構成するシャフトの長さや歯車の大きさといった連続的な寸法パラメータだけでなく、部品点数や機構構成そのものが異なる設計案についても統一的に扱うことが可能となります。
さらに、このような複雑な設計情報を、生成AIの中核技術の一つである変分オートエンコーダを用いて、最適化アルゴリズムが扱いやすい低次元かつ連続的な潜在空間へ変換します。その上でベイズ最適化を適用することで、膨大な設計候補の中から有望な設計を効率的に探索できるようにしました(図2)。

仮設プラグによる閉塞位置

図2 グラフによる設計表現の導入及び変分オートエンコーダとベイズ最適化を組み合わせた設計探索

 検証では、遠隔保守ロボットのリンク内部に配置する駆動系設計を対象として評価を行いました。その結果、トルクを重視した設計、速度を重視した設計など、それぞれの設計目的に応じた候補解が生成されることを確認しました(図3)。これにより、提案手法が遠隔保守システムの設計探索を効率化できる可能性を示しました。

 本手法は、原型炉及び商用炉における、遠隔保守を含むシステム設計検討への適用が期待されるほか、複雑な設計課題の解決を支援する基盤技術としての発展も期待されます。

仮設プラグ溶接ツール

図3 実機に近い設計条件を用いた手法の検証

 今後は、モデル構造や学習条件の検証を通じて手法の高度化を進めるとともに、有効性のさらなる検証を行っていきたいと考えています。また、本研究で対象としたロボット設計に限らず、核融合工学を支えるさまざまな機械・システムの設計問題へ適用可能な汎用的設計探索技術へ発展させることを目指します。

遠隔保守機器の詳細については、「遠隔保守機器」をご覧ください。

【参考】「第16回核融合エネルギー連合講演会」公式サイト