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ジャイロトロンシステム20機をITER機構より受託
~QSTのこれまでの実績が高く評価され、国産ジャイロトロンのさらなる性能向上へ~

 量子科学技術研究開発機構(QST)は、2025年5月、ITER機構から20機のジャイロトロンシステムの追加調達を受託しました。これを受け、2026年3月までに、設計・製造を担う国内企業6社(キヤノン電子管デバイス株式会社、ジャパン スーパーコンダクタ テクノロジー株式会社、京セラ株式会社、東京電子株式会社、株式会社NAT、株式会社トヤマ)とQSTが順次契約を締結し、2026年5月20日に7者による共同プレス発表を行いました。

8機の納入実績が今回の追加受託につながる
 今回の追加調達につながった背景には、QSTが国内企業と連携して開発・製造したジャイロトロンシステム8機をITER機構に納入し、その実績が高く評価されたことがあります。
ITER向けジャイロトロンの開発では、高いエネルギー変換効率や電力効率を実現するとともに、高出力・長時間運転によって発生する熱を効率よく取り除くなど、多くの技術的な課題を克服する必要がありました。QSTは国内企業とともにこうした課題に取り組み、世界に先駆けてITERの要求性能を満たすジャイロトロンの開発に成功しました。

 その実績がITER機構に高く評価され、QSTは当時の発注機数の約3分の1にあたる8機のジャイロトロンシステムの調達を担当しました。ジャイロトロンは、同じ仕様で製作された装置でも個体差があるため、電子ビームの軌道や電流などを一台ずつ調整し、最適な運転条件を見つける必要があります。QSTは、那珂フュージョン科学技術研究所にあるジャイロトロン試験設備を活用し、長年培ってきた技術と経験を生かして、各機を数か月かけて調整・最適化しました。その結果、2024年までに8機すべての製作・性能試験を完了し、すべてのジャイロトロンと周辺機器でITERの要求性能を達成しました。

 2025年には、ロシアや欧州に先駆けて、8機すべてのジャイロトロンシステムをITER機構へ納入しました。これは、国内企業が持つ高い製造技術とQSTの研究開発・調整技術を組み合わせた成果です。 こうした8機の開発・納入実績に加え、QSTと国内企業が培ってきた日本のジャイロトロン関連技術のサプライチェーン全体の実力が評価されたことが、今回の20機の追加調達の受託につながりました。

ITERでは48機が必要に
 ITERの新しい計画では、2034年の研究運転開始(SRO)に必要なジャイロトロンシステムが、当初の8機から48機へと大幅に増加しています。このうち28機を日本が担当する予定であり、今回の20機の追加調達は、ITERにおける日本のジャイロトロン技術の重要性がさらに高まっていることを示しています。

今回は1.2MWへの出力向上にも挑戦
 今回製作する20機は、これまで納入した8機をそのまま複製するものではありません。ジャイロトロン1機あたりの出力を、これまでの1,000kW(1MW)から1,200kW(1.2MW)へ高めることを目指しており、それに対応するため、各機器の設計改良を行います。
  ジャイロトロン本体については、すでに1.2MWの出力に対応できる設計となっていますが、より安定して高出力運転を行うため、電子銃の改良を進めます。また、マイクロ波を効率よく伝送する「準光学整合器(MOU)」についても、1.2MWの出力に対応するための改良や冷却性能の向上を図ります。これに伴い、MOUを支える架台についても改良を行います。
 さらに、高電圧電源の高速アノードスイッチについては、ITER機構における火災対策を踏まえ、絶縁油を使用しない仕様へ改良します。 これらの設計改良は、QSTが中心となって国内企業6社と連携し、それぞれの技術や知見を生かしながら進めていきます。

ジャイロトロンとは
 ジャイロトロンは、核融合炉のプラズマを加熱するための高出力マイクロ波を発生させる装置です。
ITERでは、170GHzという非常に高い周波数のマイクロ波を発生させ、プラズマを1億度以上の高温に加熱するために使用されます。ITERで使用するジャイロトロンは、全長約3m、重さ約800kgにもなる大型の装置です。
ジャイロトロンでは、電子銃から発生させた電子を強い磁場の中でらせん状に運動させ、その運動エネルギーをマイクロ波に変換します。高出力のマイクロ波を安定して発生させるためには、電子ビームを精密に制御する技術や、運転によって発生する熱を効率よく取り除く技術など、高度な技術が必要です。  ITERでは、こうして発生させたマイクロ波をプラズマに入射し、核融合反応に必要な高温状態をつくり出します。ジャイロトロンは、ITERのプラズマ加熱を担う重要な機器の一つです。

国内企業6社がそれぞれの技術で開発に参加
 今回の20機の製作では、国内企業6社がそれぞれの専門技術を生かして、ジャイロトロンシステムを構成する機器の設計・製造を担当します。

ジャイロトロン及び周辺機器の製造担当を示す断面図

図1 ジャイロトロン及び周辺機器の製造担当を示す断面図

キヤノン電子管デバイス株式会社
ジャイロトロン本体を製造。高精度な電子銃などの製造技術を生かし、1.2MWへの出力向上に対応したジャイロトロンを製作します。
ジャパン スーパーコンダクタ テクノロジー株式会社
超伝導コイルシステムを製造。ジャイロトロン内部で電子をらせん状に運動させるための、強い磁場を発生させます。
京セラ株式会社
セラミック円筒を製造。ジャイロトロンに高電圧を印加するための部品で、大口径のセラミックと金属部品を高精度に接合する技術が活用されています。
東京電子株式会社
高電圧電源(アノード・ボディー)と高速アノードスイッチを製造。今回の調達では、火災対策として絶縁油を使用しない仕様への改良にも取り組みます。
株式会社NAT
コレクタースイープコイル、高電圧給電装置、架台などを製造。電子ビームから発生する熱を分散させる機器や、ジャイロトロンを支える架台を担当します。
株式会社トヤマ
準光学整合器(MOU)を製造。ジャイロトロンから出力されたマイクロ波を導波管へ効率よく伝える機器で、今回の出力向上に対応した改良にも取り組みます。

 今後は、QSTと国内企業6社が連携して20機の製作を進め、ITER機構への納入を目指します。今回の契約には、さらに4機の追加調達オプションも含まれており、最大24機を製作する可能性があります。20機の製作には5年間を要する見込みです。
 今回の取り組みを通じて培われる高出力ジャイロトロンの設計・製造技術や量産のノウハウは、ITERだけでなく、将来の核融合発電炉の実現にもつながることが期待されています。また、日本のジャイロトロン関連技術のさらなる向上や、関連産業の発展にも貢献することが期待されます。

プレスリリースの詳細は、QSTプレスリリース(2026年5月20日発表)をご覧ください。
また、ジャイロトロンの詳細については、「高周波加熱装置」をご覧ください。

今回のQSTプレスリリースに関するメディア掲載情報は以下をご参照ください。

2026/5/27 日本経済新聞 量研機構、核融合実験炉ITERの加熱装置受託 キヤノン系など製造
2026/6/2 lush book life QST、ITER機構からのジャイロトロンシステム受託