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ジャイロトロンによるITERサイトでのマイクロ波出力に成功
~170GHzのマイクロ波発生を確認、ITERでのプラズマ加熱に向けて前進~

 量子科学技術研究開発機構(QST)は、ITER機構と協力し、南フランスに建設中の核融合実験炉ITERにおいて、プラズマの加熱に使用するジャイロトロンシステムを実際に動作させ、170GHzのマイクロ波を出力させることに成功しました(図1)。

 今回の成功は、QSTが調達したジャイロトロンと、電源や超伝導コイルなどの周辺機器をITERサイトで一つのシステムとして組み上げ、実際の核融合装置で動作させたものです。2034年のITER運転開始に向けた重要なマイルストーンとなる成果です。

初のマイクロ波の出力に成功したジャイロトロン初号機

図1 初のマイクロ波の出力に成功したジャイロトロン初号機

ジャイロトロンとは
 ジャイロトロンは、プラズマを加熱するための高出力マイクロ波を発生させる装置です(図2)。
ITERでは、170GHzという非常に高い周波数で、最大100万ワット(1MW)のマイクロ波を発生させます。ジャイロトロンは、電子銃から発生させた電子を強い磁場の中で運動させ、そのエネルギーをマイクロ波に変換します。安定して高出力のマイクロ波を発生させるためには、ジャイロトロン本体だけでなく、超伝導コイル、電源、冷却装置、制御装置など、多くの機器を正確に連動させる必要があります。

国内企業6社がそれぞれの技術で開発に参加
 今回の20機の製作では、国内企業6社がそれぞれの専門技術を生かして、ジャイロトロンシステムを構成する機器の設計・製造を担当します。

ジャイロトロンの断面図

図2 ジャイロトロンの断面図

ITERサイトで3年かけてシステムを構築
 QSTは、那珂フュージョン科学技術研究所のジャイロトロン試験設備で8機のITER用ジャイロトロンシステムの性能試験を行った後、ジャイロトロン本体や超伝導コイル、準光学整合器(MOU)などの機器をITERサイトへ輸送しました。ITERサイトでは、QSTが中心となって、ジャイロトロンと周辺機器の据え付けや調整を進めてきました。
特に重要なのが、ジャイロトロンと超伝導コイルの位置合わせです。超伝導コイルは重さ約1トン、高さ約1.1m、直径約1.4mにもなる大型機器ですが、ジャイロトロンと超伝導コイルの中心軸を1mm以内の精度で合わせる必要があります。また、数万ボルトの高電圧を供給する3系統の電源や制御装置についても、正常に動作するよう調整を行いました。
 こうした精密なシステム構築を約3年間にわたって進め、今回の現地試験に臨みました。

まずはジャイロトロンから電子を引き出す
 試験では、まずジャイロトロン内部から電子を安定して引き出せる状態にする必要があります。
ITERへ輸送した後、ジャイロトロンはしばらく保管されていたため、内部の部品表面にガスが吸着している可能性がありました。そこで、電子銃を加熱して内部に吸着したガスを放出させる「ヒーターエージング」を行い、ジャイロトロン内部の状態を整えました。その後、高電圧を印加して電子を引き出す試験を行い、電子ビームが正常に発生することを確認しました。

超伝導コイルの位置を微調整し、170GHzの発振に成功
 次に、ジャイロトロンから設計どおりの170GHzのマイクロ波が発生しているかを確認しました。マイクロ波の出力状態を調べるため、出力されたマイクロ波を方眼紙に照射し、その熱分布を赤外線カメラで撮影しました。試験開始時には、ビームが複数に分かれたような状態が確認されました。これは、170GHzとは異なるマイクロ波が発生している状態でした。

 原因として、ジャイロトロンと超伝導コイルの磁気軸がわずかにずれている可能性が考えられたため、QSTの職員が超伝導コイルの位置をレーザー変位計で確認しながら微調整しました。その結果、コイルをx方向、y方向にそれぞれ約1mm動かした位置で、170GHzの正規のビームパターンを得ることに成功しました(図3)。
さらに周波数を測定したところ、170.135GHzで強い信号が確認され、設計どおりの周波数でマイクロ波が発生していることを確認しました(図4)。

ジャイロトロン1号機の出力試験の様子

図3 ジャイロトロン1号機の出力試験の様子。
超伝導コイルの位置調整を行うことで、正規発振である170GHzのビームパターンの出力に成功。

周波数計測結果。正規発振170GHzを確認

図4 周波数計測結果。正規発振170GHzを確認

0.1mmの精度まで調整して試験を完了
 170GHzのマイクロ波発生を確認した後、ジャイロトロンの性能をさらに高めるため、ジャイロトロンと超伝導コイルの中心軸を0.1mmの精度で合わせる調整を行いました。これにより、ITERサイトでジャイロトロンシステムを実際に動作させ、設計どおりの170GHzのマイクロ波を発生させるところまで確認することができました。
 今回の成果は、ジャイロトロン単体の性能を確認したものではなく、ジャイロトロン、超伝導コイル、電源、制御装置など、多数の機器を組み合わせたシステム全体をITERサイトで動作させることに成功したものです。

今後は100万ワットの高出力運転へ
 今後は、ジャイロトロンから出力したマイクロ波を吸収する「ダミーロード」までの伝送系を整備し、定格性能である100万ワット(1MW)のマイクロ波を数百秒間連続して出力する試験を行う予定です。また、ITERの初プラズマ達成と研究運転開始に必要となる残り7機のジャイロトロンについても、QSTが主導して順次、ITERサイトでの試験を進めていきます。
 今回の成果は、ITERにおけるプラズマ加熱システムの実現に向けた重要な一歩であるとともに、QSTが国内で培ってきたジャイロトロンの技術を、実際の核融合装置で実証した成果でもあります。

プレスリリースの詳細は、QSTプレスリリース(2026年7月31日発表)をご覧ください。
また、ジャイロトロンの詳細については、「高周波加熱装置」をご覧ください。

今回のQSTプレスリリースに関するメディア掲載情報は以下をご参照ください。

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