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令和7年度プラズマ・核融合学会 第42回年会若手学会発表賞を受賞

ITER水平ポートランチャーの散乱RF熱負荷評価手法の開発および設計最適化

 令和7年12月1日~4日に開催されたプラズマ・核融合学会 第42回年会において、那珂フュージョン科学技術研究所 ITERプロジェクト部 RF加熱開発グループの矢嶋 悟主任研究員が、「ITER水平ポートランチャーの散乱RF熱負荷評価手法の開発および設計最適化」により、令和7年度プラズマ・核融合学会 第42回年会若手学会発表賞を受賞しました。

図1 令和7年度プラズマ・核融合学会 第42回年会若手学会発表賞を受賞した矢嶋 悟主任研究員

 ITER水平ランチャーはプラズマを核融合レベル(1億度)まで加熱し、維持するため、強力なRF(電磁波)をプラズマへ伝送する機器であり、ミラーを駆動して170 GHz / 20 MWの電磁波をプラズマ中の狙った箇所に送り込むことができます。特にITERでは運転中に多量の中性子が発生するため、電磁波をできるだけ中に通しつつ、中性子は外に出さないようランチャー設計を工夫する必要があり、図2, 3に示すようなミラー対による折返し構造(dog-leg構造)で電磁波伝送と中性子遮蔽を両立しています。しかし、中性子を十分に遮蔽するためには電磁波が通る空間をある程度制限する必要があり、結果としてランチャー内壁にぶつかり散乱する電磁波(散乱波)が入力の1~2%程度(200~400 kW)も生じるため、散乱波由来のランチャー内発熱の過度な集中による塑性変形リスクを未然に防ぐことが、調達におけるコストを必要十分に抑えるために重要になります。

図2 ITER水平ランチャーによる電磁波伝送

図3 水平ランチャー上段光学系の模擬試験装置(原寸大スケール)。水平ランチャーには、この「上段」光学系のほかに、同じ大きさの「中段」と「下段」もあり、全高2 mほどの機器になります。

 これまで、散乱波由来の発熱分布を複雑かつ波長より大きな構造体に対し、現実的な計算時間で評価した例はありませんでした。今回の研究では、周波数170 GHz(波長1.8mm)の電磁波が数十cm幅のランチャー内光学系や1cm以上の色々な隙間を通って散乱する際に回折効果が支配的でない、言い換えると、ITERほどの大型構造に対し、短波長の電磁波は光線でよく近似できるようになることに着目し、光線の束として電磁波パワーの行方を近似的に追跡し、ランチャーのCADモデル上のどこでどれだけ熱に変わるかを10 mm区画ごとに調べ、発熱(熱流束)の3次元分布を得るための計算手法を開発しました。これにより、ランチャー内の①主な発熱箇所の特定に加え、②原因となる構造の特定、③構造の調整による発熱ピークの除去や狭隘部への電磁波流入の低減効果を明確に示すことができました。

本研究の成果物である熱流束分布は熱応力解析の入力条件としても利用できることがわかり、ランチャー設計最終化の一助となりました。今後、ITER水平ランチャーは製作フェーズに移ります。製作における誤差の影響についてはこれまでも考慮してきましたが、今回開発した手法で色々な誤差の影響を比較検討することで、何を重視して製作すれば良いかをよりよく理解し、ランチャーの完成に貢献できると考えています。

参考:一般社団法人 プラズマ・核融合学会|第42回年会若手学会発表賞について