中性粒子ビーム試験施設 MITICA試験装置、最終据付へ
2026年10月5日
NBTF研究者 ジェームズ・ザックス、 中性粒子ビームプロジェクトリーダー ピエルルイジ・ヴェルトリ
イタリア・パドバに位置するITER中性粒子ビーム試験施設(NBTF)にて、ITER加熱用中性粒子ビーム入射装置の実機大プロトタイプであるMITICAの主要コンポーネントのうち、最後の2つが搬入されました。これによりチームの体制は、最終組立と試運転の開始へと移行しています。
この夏、ビーム源(左)とカロリメータ(右)が納入されたことで、MITICAの主要機械コンポーネントがすべてITER中性粒子ビーム試験施設(NBTF)に揃いました。(写真:ITER機構提供)
MITICAは、ITERの強力な中性粒子ビーム入射技術の開発・実証を目的とした、中性粒子ビーム試験施設内にある2つの試験装置のうちの1つです。
ITERでは、2基の加熱用中性粒子ビーム入射装置が、それぞれ最大16.5 MWの加熱パワーをプラズマに供給します。これは、負イオンを1 MeV(100万電子ボルト)のエネルギーまで加速・中性化したうえで、高エネルギーの粒子としてプラズマ内へ打ち込む(入射する)ことで実現されます。
2018年から稼働しているSPIDERは、負イオンの生成と引き出しに特化した装置です。一方、MITICAは、実機と同スケール・同電圧で中性粒子ビーム入射装置全体を再現するものであり、この開発プログラムを次の段階へと大きく前進させる役割を担っています。
フランス・タルブのAlsymex社工場に設置されたMITICAのビーム源。6月にパドバへ納入された後、現地受入試験として目視検査、寸法計測、冷却回路の漏えい試験、電気・絶縁試験などが実施されました。また、先行して稼働するSPIDERの知見に基づき、セラミックと金属の接合部におけるシール(密封部)の一部改修も予定されています。(© ALSYMEX)
MITICAのビーム源内部では、4対の高周波(RF)ドライバーによって水素または重水素ガスをプラズマ化します。特殊処理を施したグリッド(電極)によってプラズマから負イオンを引き出し、多段加速器により、100万ボルト近くの超高電圧を用いて加速します。
その結果、最大40 MWのパワーを持つ粒子ビームが生成され、MITICAは、史上最強のイオン源として位置づけられることになります。
2026年6月に中性粒子ビーム試験施設へ納入されたビーム源は、欧州の国内機関「Fusion for Energy(F4E)」が主導した調達活動の集大成です。このプロジェクトには、Research Instruments GmbH、Galvano-T、CECOM、3DMFが参画し、最終組立と試験はF4Eとの緊密な連携のもと、ALSYMEXが実施しました。
MITICAビームラインの反対側に設置されるカロリメータは、試験において重要な診断(計測)機能を担います。F4Eが調達し、AVS-Tecnaliaコンソーシアムが製造したこの装置は、試運転・コンディショニング運転の際にフルパワーの粒子ビームを受け止め、そのプロファイルや強度を評価できるよう設計されています。なお、ビームの強度は最大14 MW/m2に達します。
カロリメータは、間隔を空けて配置された銅合金製冷却管を備える2枚の可動パネルで構成されています。ビーム源から照射される強力なビームの熱を冷却水によって除熱する一方、内部に組み込まれたセンサーによって、ビーム強度や集束状態を正確に計測します。(© RFX)
両コンポーネントの現地受入試験が完了したことを受け、最終据付は2027年春に開始される予定です。
その間にも、試験装置のもう一つの要となる高電圧電源システムの作業が進められています。
当初、100万ボルト(1 MV)の絶縁変圧器で発生した不具合により、スケジュールへの影響が懸念されていました。しかし、作業の並行実施や工程の見直しによって、想定される遅延期間は約10か月から5か月へと半減されました。
現在、修理作業は完了間近となっており、極低温冷却パネルの試験も進められています。
電気系統における次の大きなマイルストーンは、加速器グリッド電源をダミー負荷に接続し、最大定格である1 MVまで出力を引き上げることです。これにより、実際のビーム運転に伴う過酷な条件下でも、システムが確実に機能することを実証します。
MITICAの試運転は2027年夏に開始される予定です。これにより、ITER中性粒子ビーム試験施設は新たなフェーズへと突入し、ITER本体に設置される2基の加熱用中性粒子ビーム入射装置の技術が、ついに実機大スケールで検証・実証されることになります。
【引用元】
ITER機構サイト ITER NEWSLINE|Neutral Beam Test Facility
MITICA testbed: final installation scheduled to begin
(5 Oct 2026 - James Zacks, NBTF scientist, and Pierluigi Veltri, Neutral Beam Project Leader)