高さ18メートルの巨大電磁石が完成
ITER中心ソレノイドの積み重ねが完了
2026年6月29日
110トンの最終モジュールが据え付けられたことにより、世界最大のパルス通電型超伝導電磁石が、その全高に到達しました。
支持構造や計測機器を含めた最終組立により、中心ソレノイドは重量約1,000トン、5階建てのビルに匹敵する巨体となります。その蓄積エネルギーは6.4ギガジュールに及び、最大13テスラの強磁場を発生させます。(写真提供:ITER機構)
6月23日、最終モジュールの吊り上げ・据付が成功し、中心ソレノイドの積層作業が完了しました。ITERトカマクの中心核を担うこの巨大電磁石は、航空母艦を宙に持ち上げられるほど強力な磁力を誇ります。
トカマクピットへの移設に向けて未だ重要な技術的工程を残しているものの、中心ソレノイドの積層完了はITERプロジェクトにおける偉大なマイルストーンです。そして、この巨大磁石の製造、輸送、組立を結実させるために、長年にわたり紡がれてきた国際協力の集大成でもあります。
ITER機構のクライオスタット内組立プロジェクトリーダー、パトリック・プティ氏は、次のように述べています。
「これは極めて重要な工程でした。緊密な連携のもと、技術チームが素晴らしい仕事を成し遂げてくれたおかげで、主要な組立マイルストーンを達成することができました。この成功は、ITER機構とパートナー機関との効果的な協力関係を具体化するものです。」
全高18メートル、総重量約1,000トンに達する中心ソレノイドは、トカマク内部で核融合反応を開始・制御するために不可欠なプラズマ電流を誘起します。 同磁石の調達は米国国内機関(US ITER)が担当しました。
6基の本体モジュールと1基の予備モジュールは、カリフォルニア州のゼネラル・アトミクス(General Atomics)社が製作を手掛け、日本で製造されたニオブ・スズ(Nb3Sn)超伝導導体が使用されています。
中心ソレノイドモジュールは、最終据付位置まで2ミリメートル以内という極めて高い位置精度が要求されます。今回の難工程は、ITER機構のエンジニアと、組立請負企業であるCNPEコンソーシアムの専門家との緊密な連携によって成し遂げられました。(写真提供:ITER機構)
最終盤の吊り上げは、至難の作業となりました。
すでに積層されていた5基のモジュールのさらに上空へと、110トンの巨体部材を吊架。そこから、片側50ミリ、もう一方はわずか65ミリという極限の隙間しか残されていないバスバー(母線)リード線の間をくぐり抜け、定位置へと慎重に降下させる精密なオペレーションが求められました。
「モジュールごとにクリアランス(隙間)の条件は異なっていましたが、最上部に据え付ける最終モジュールは特に別格でした。独自の据え付け経路を設定する必要があり、すでに配置済みの2基のモジュールから伸びるバスバーリードとの干渉を避けるため、非常に厳密な測量が求められたのです」今回の作業を監督したITER機構の超伝導エンジニア、カール・コーマニー(Carl Cormany)氏は当時をそう振り返ります。
「吊り上げ作業は非常に順調に進み、6基すべてのモジュールが定位置へと据え付けられたことは、大きな成果です。しかし、歩みを止めるわけにはいきません。私たちはすでに、中心ソレノイドの次なる挑戦へと目を向けています。」
確かに積み重ねが完了し、中心ソレノイドはその全高に到達したものの、全体の組立作業が終わったわけではありません。
今後、エンジニアチームはまず6基すべてのモジュールが正確な位置にあるかを確認するため、詳細な測量を実施します。その後、配管の接続、計測・計装機器の取り付け、構造を支持するタイプレートシステムの組み立てを経て、最終的にスタック全体を運転時の設計状態まで圧縮する作業へと進みます。一連の工程は、今後1年以上にわたって続けられる予定です。
中心ソレノイド外側のヘリウム冷却配管について説明する、ITER機構の超伝導エンジニア、カール・コーマニー(Carl Cormany)氏。次工程では、一次供給・戻り配管が、内部のヘリウムマニホールドへと接続されます。(写真提供:ITER機構
こちらの動画では、2026年6月23日、ITERトカマクの中心に設置される中心ソレノイドの最終(6基目)モジュールが据え付けられ、その積み重ねが完了するまでの全容をご覧いただけます。(55秒)
【引用元】
ITER機構サイト ITER NEWSLINE|Central solenoid assembly milestone Standing tall
(29 Jun 2026)