ITER磁石試験施設が稼働開始
ITERサイト内の磁石低温試験施設(Magnet Cold Test Facility)で運転が開始されました。この施設では、一部の超伝導磁石について、ITERでの運転温度である4ケルビン(-269℃)まで冷却し、実機への据付前に定格電流まで通電して試験を行います。
2026年5月27日
試験対象となる最初のトロイダル磁場(TF)コイルTF07。ITER磁石試験施設の容積800m³のクライオスタット内に設置され、蓋を閉じる前の様子。現在、このコイルは運転温度である4ケルビン(-269℃)までの冷却に成功し、大電流通電試験の開始を控えています。(写真提供:ITER機構)
2026年5月21日、最初の試験対象となる磁石コイルの4ケルビンまでの冷却に成功したことが発表されました。この成果を記念し、ITER理事会管理諮問委員会(Management Advisory Committee)のメンバーがITER制御室を訪れ、試験チームとともに節目を祝いました。
最初に試験を受ける磁石コイルは、重量330トンのITERトロイダル磁場(TF)コイル7号機(TF07)です。今後は異なる製造メーカーによる他のTFコイルに加え、ITERで最も小さいリング状のポロイダル磁場(PF)コイルであるPF1も試験対象となります。
外部試験によってITER装置内の運転条件を完全に再現することはできませんが、磁石低温試験施設での試験により、磁石の挙動、極低温性能、電気的インターフェース、計測システム、さらには磁石コイル内部で巻線された超伝導導体層を接続する重要な接合部に関する貴重な情報が得られます。これにより、ITERのリスク低減と運転開始に向けた準備がさらに強化されます。
試験の主な目的には、異なる温度条件下での高電圧絶縁性能の検証、クエンチ※検出能力の実証、および定格電流におけるコイル性能の確認が含まれます。定格電流は、TFコイルで68kA、PF1で48kAです。また、計測システム、制御ロジック、および磁石保護機能の検証も実施されます。
5月21日(木)、ITER理事会管理諮問委員会(Management Advisory Committee)の委員らがITER制御室を訪れ、ITER磁石低温試験施設の運転を監督するチームと面会しました。(写真提供:ITER機構)
ITER磁石低温試験プログラムは、ITERの組立および試運転に関する改訂計画の一環として2023年に開始されました。試験施設は短期間で整備され、以前に欧州国内機関(Fusion for Energy)がITER用のポロイダル磁場コイル4基を製作していた建屋(ポロイダル磁場コイル巻線建屋)内に設置されています。この施設では、建屋の広い空間や大型搬送設備、さらに極低温プラントに近接しているという利点が活用されています。
ITER機構のピエトロ・バラバスキ機構長は次のように述べています。
「ITERのような世界初のプロジェクトには、規律ある遂行と同時に創意工夫も求められます。既存インフラの再活用、極低温プラントの能力活用、そして多分野にわたる専門家チームの結集により、統合試運転前にリスクを低減する実践的な方法を構築しました。これはITERにとって重要な取組であるとともに、知識、インフラ、運転経験を創出することで、より広い核融合分野にも貢献できるITERの一例です。」
複数のITER磁石の試験終了後、この磁石低温試験施設は、ITER機構が進める知識共有および民間核融合分野との連携活動の一環として、他の核融合関係機関や企業にも提供される予定です。
(民間核融合分野との連携を推進する「Private Sector Fusion Engagement Program」の詳細はこちらをご覧ください。)
※クエンチ(Quench) 超伝導磁石は、極低温温度、電流密度、磁場強度などの条件が一定の範囲内に保たれている限り超伝導状態を維持できます。しかし、これらの条件を外れると、磁石は通常の電気抵抗を持つ状態へ移行し、大電流によって発熱や電圧上昇が発生します。この超伝導状態から抵抗状態への移行現象を「クエンチ」と呼びます。
試験容器(クライオスタット)の蓋を閉じた後、磁石が定格運転温度である4ケルビン(-269℃)に到達するまでには12日を要しました。今後、最初の試験対象コイルは定格電流である68kAまで段階的に通電される予定です。
クライオスタットに蓋を設置してから、磁石が定格運転温度である4ケルビン(-269℃)に到達するまでに12日を要しました。今後、最初の試験対象コイルは定格電流(68kA)まで段階的に通電される予定です。(写真提供:ITER機構)
5月21日付のプレスリリース (PDF)もあわせてご覧ください。
【引用元】
ITER機構サイト ITER NEWSLINE|
ITER magnet test facility now operational (27 May 2026)