ピエトロ・バラバスキ機構長メッセージ
「建設的な競争はこの分野にとって有益」
先週、ITERで開催された第3回ITER官民融合ワークショップには、世界のフュージョンエネルギー分野から数百人が参加しました。ITER機構のピエトロ・バラバスキ機構長は、フュージョンエネルギー分野におけるアイデアや資源の増加が、この分野全体のさらなる発展につながっているとの考えを共有しました。
2026年5月4日
第3回ITER官民融合ワークショップは2026年4月28日に開幕(写真提供:ITER機構)
ITERは過去3年で3回にわたり、スタートアップや企業、投資家など、フュージョンエネルギーを取り巻く多様な関係者を現地に迎えています。こうした橋渡しの場はなぜ重要だとお考えですか。
私にとって、このプロジェクトはフュージョンエネルギーコミュニティ全体のものです。
ITERは公的資金によって支えられており、加盟極の研究者や関係者が数十年にわたり取り組み、紙の上の概念であったものを大規模な研究インフラへと発展させてきました。
その過程で私たちは膨大な知見を蓄積しており、科学運転の開始を待たずとも、すでにコミュニティに価値ある情報を共有できる立場にあります。これまでは加盟極の公的研究機関と共有してきましたが、現在は民間および官民連携の取り組みとも知識を共有する道を広げています。
長年にわたりITERはこの分野の中心的存在でしたが、民間の取り組みは競争相手と捉えていますか。
歴史的に見れば、ITER加盟極はそれぞれ独自の道を進んでいました。しかし1980年代初頭になると、課題の大きさから、より強固な国際協力が必要であることが明らかになりました。ITERはその流れの中で誕生し、国際的な科学協力が世界平和の一助となり得るという理念のもと推進されてきました。
私は1990年代、この協力の時代にITERに参加しました。当時の複雑な国際情勢の中で達成された成果を、今でも大変誇りに思っています。その後、別のプロジェクトに携わりましたが、2022年に機構長としてITERに戻りました。その時には、協力に対する私の考え方も変化していました。
機器の納入が加速し、建設プロジェクトとしての遂行が求められる中で、過度に協力に配慮することが、時に意思決定や実行の遅れにつながることもありました。
私の考えでは、協力と競争の健全なバランスが重要です。一つの主体だけが存在する状況は望ましくありません。特にこれほど大規模なプロジェクトでは妥協は避けられませんが、その影響を十分に理解し、目的に照らして慎重に判断する必要があります。優れたアイデアが数多く生まれ、新たな資源も投入されている現在の状況は、この研究分野をより健全なものにしています。協力と競争のバランスが、フュージョンエネルギーという取り組みに新たな価値を生み出していくのです。
ITERプロジェクトは民間のフュージョンエネルギー開発にどのような価値を提供できますか。
ITERは独自で不可欠な役割を担っています。フュージョンエネルギーに関わる物理、工学、そして産業的実現性を統合し、大規模に検証している場です。
私たちは、あらゆるフュージョンエネルギーの取り組みを支える知識、ノウハウ、データ、そして試運転(コミッショニング)の経験を創出しています。これらは公共・民間を問わず、すべてのプロジェクトにとって有益なものとなるでしょう。
また、プロジェクト遂行の観点でも、ITERは一つのモデルになり得ると考えています。この3年間で大きな立て直しを行い、現在は最も重要な組立工程をコストおよびスケジュールを守りながら進めています。国際協力が効果的に機能し得ることを、私たちは実証してきました。
この過程で得た教訓は他のプロジェクトにとっても有益であり、私たちはそれを共有する用意があります。
また、こうしたITERの進展が、民間部門における競争環境の健全化と並行して進んでいるのは偶然ではないかもしれません。フュージョンエネルギー技術への投資は増加しており、多くのスタートアップが世界中で誕生しています。これは非常に前向きな動きであり、ITERにも多くの好影響をもたらすでしょう。
ITERの使命は、フュージョンエネルギーコミュニティ全体を支えることです。加盟極に属する研究者や企業であれば、年次ワークショップ以外でもITERを訪れ、自らのプロジェクトの前進に必要な知見を得ていただきたいと考えています。フュージョンエネルギーの実現に向けては、今後も多くの技術的課題が存在します。ITERは、競争という健全な環境の中で、協力の中心的な場であり続けたいと考えています。
編集者注:新しい民間核融合参画(Private Sector Fusion Engagement)プロジェクトのリソースページは こちら をご覧ください。
【引用元】
ITER機構サイト ITER NEWSLINE|
Pietro Barabaschi has a message: “Constructive competition is good for our field” (4 May 2026)