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日本、ITERブランケット初期組立用ツールを開発

2032年のITERブランケット初期組立に向け、日本が高精度な多機能初期組立ツールを開発中。
将来の核融合炉遠隔保守技術にも貢献する。

2026年4月27日

 日本では、ITERブランケットの初期組立を支援するための専用ロボットツール群の開発が進められている。限られた作業空間での使用を前提に設計されたこれらのツールは、把持、締結、溶接、切断といった作業を極めて高い精度で実行することが可能だ。
本インタビューでは、ITER日本国内機関(ITER Japan Domestic Agency, JADA)でチームリーダーを務める田中雄幸主幹技術員が、多機能ロボットツール開発に伴う課題や、初期組立で得られる知見がITER運転中のブランケット遠隔保守戦略の形成にどのように貢献していくのかを語る。

ITERブランケット初期組立用グリッパおよびツールの研究開発チームを率いる田中雄幸主幹技術員(右)。
写真では、実地経験を積みながら成長している若手エンジニアの西舘佑翔技術員(左)とともに作業中。
(写真:QST)

ITERブランケットの「初期組立」とはどのような作業で、どのような遠隔操作ツールが必要になるのでしょうか。

 ITERでは、ブランケットの初期組立は2032年から数か月にわたって実施される予定で、2034年のプラズマ運転開始に向けた重要なマイルストーンとなります。この工程では、第一壁及び遮蔽ブロックから構成されるブランケット440体を真空容器内の所定位置に搬入し、フレキシブルカートリッジやキーパッド といったインターフェース部品を介して構造体にボルト締結する必要があります。

 重量のある遮蔽ブロックはグリッパーを介しタワークレーンなどの搬送設備によって運ばれますが、ボルトの締緩作業や配管の溶接・切断といった高精度作業については、遠隔保守で用いられる技術に類似した手法が採用されます。日本では、把持用グリッパーや締結ツールといったロボットアーム用エンドエフェクタや、冷却水配管の溶接・切断ツールの開発を担当しています。

 これらのグリッパーは単なる把持用機器にとどまらず、ブランケットモジュールを安全に保持しながら仮締結(一次ボルト締め)も行える多機能エンドエフェクタとして設計されています。初期組立の段階では、限られた空間で複数の作業を連続して実施しなければならないため、このような汎用性が不可欠です。

 モジュールの仮固定が完了した後は、プラズマ運転時の荷重に耐えられるよう、ボルトを非常に高いトルクで本締めする必要があります。また、隣接するブランケット同士、あるいはブランケットと主冷却配管を接続する冷却水配管の溶接も行われます。これらの初期組立作業のために、専用のボルト締結ツールおよび溶接ツールが求められています。

ブランケット遠隔保守システム用に開発されたグリッパー試作機を指し示す田中主幹技術員。
グリッパーおよびツールの初期組立への適用を支えている。(写真:QST)

初期組立用ツールの開発と実装は、ITER運転時に使用されるブランケット遠隔保守システムにどのように役立つのでしょうか。

 日本は、ITER機構との調達取決めのもとでブランケット遠隔保守システムの開発を進めており、その知見を初期組立用ツールの開発にも活用しています。 高放射線環境下でブランケットの遠隔保守を行う運転段階とは異なり、初期組立用のグリッパーやツールは、プラズマ運転前の非放射線環境で真空容器内にて使用されます。この段階では作業員が機器の近くで作業できるため、狭隘空間におけるツールの挙動や性能を直接確認することが可能です。

 このような稼働前組立フェーズで得られる実体験は、装置が放射化した後には決して得られない貴重なものです。これらの知見を体系的に整理・反映させることで、ツールの保守性向上、遠隔操作手順の高度化、将来の高放射線環境を見据えた設計改善につなげることができます。その結果として、ITERにおける長期的な遠隔保守アプローチの強化が期待されます。

ITER機構から製作認可を受けたアイテムは、段階的に試作製造が開始されている。
写真は冷却水配管切断用ツールのプロトタイプ。(写真:QST)

この種の高精度・多機能ロボット機器を開発するうえでの課題には、どのようなものがありますか。

 数多くの技術的課題の中でも、特に困難なのが、極めて限られた空間で確実な溶接を実現することです。対象となるのは配管内部、すなわちボアホール内部であり、通常の配管溶接のように外側から作業することは、核融合炉という環境では不可能です。
そのため、私たちは内径43.7 mmの冷却水配管内部にツールを挿入し、内側から溶接や切断を行う技術の開発に取り組んでいます。
 ブランケット組立環境では、ツールのサイズ、可動自由度、進入角度、溶接中の安定性に厳しい制約が課せられます。十分な精度で操作できる一方で、構造的な剛性を損なわない機構を設計するためには、機械的複雑性、堅牢性、運用信頼性の高度なバランスが求められます。さらに、高度な清浄度管理も欠かせません。金属粉や切りくずが真空容器内に落下する事態は、絶対に避けなければならないからです。

 最後に、私たちが開発しているブランケット初期組立用エンドエフェクタおよびツールは、高度なロボット機能、工程ごとの作業性、そして人の運用経験を統合するための実証基盤となります。初期組立フェーズで得られる実地経験は、将来の遠隔保守だけでなく、より広範な核融合炉開発にとっても非常に貴重な財産になると確信しています。

量子科学技術研究開発機構(QST)による本件の日本語プレスリリース も併せてご覧ください。

ITERブランケットの初期組立を支援するための専用ロボットツールを操作する田中主幹技術員(写真:QST)

ブランケット遠隔保守システム用に開発されたグリッパー試作機を指し示す田中主幹技術員(写真:QST)

ITERブランケットの初期組立を支援するための専用ロボットツール(写真:QST)

【引用元】
ITER機構サイト ITER NEWSLINE|
Japan is developing tooling for initial blanket assembly (27 Apr 2026 )