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ITER職員合格者インタビュー | 宮澤 啓さん

社会人からインターンシップ経験を経て選んだ、ITER機構職員という道

宮澤啓さん(2026年1月 ITER機構着任)
合格ポジション:Project Control Systems Officer

 新卒にて大手自動車メーカーで経験を積みながら充実した時間を過ごすものの、もう一度自分のキャリアを見つめ直したいという思いから退職を選んだ宮澤さん。キャリア再考の途中で、ITER機構のインターンシップがありました。
 その後、職員選考試験に挑戦した彼の心の変化や、見つめ直したキャリアについてお聞きしたので、最後までご覧ください。

インタビュー日:2025年11月12日

大学時代の学びと
これまでのキャリアについて教えてください。

 私は小さい頃から漠然と海外への憧れを抱いていました。得意科目だった世界史で、
特に大航海時代に強く惹かれたことがきっかけで、語学系の大学に進み、ポルトガル語を専攻しました。在学中に魅了されたのがブラジルという国です。ブラジルの実態をもっと深く知りたいという思いから、交換留学ではなく、あえて大学を1年間休学し、ブラジルのリンゴジュース工場でインターンシップを行いました。現地で働きながら生活をすることで、教室では学べない文化や価値観、社会の実情に触れることができました。この経験は私にとって最善の選択であり、現在の人生観を形成する大きな原点になったと感じています。
 しかし、ブラジルにおいて日本は地理的にも心理的にも遠い国です。日本のことがまだ十分に理解されていないと感じる場面も多くありました。だからこそ、「もっと日本のことを知ってもらい、良さを世界に届けたい」という想いが強くなりました。
 結果的に最初の就職先として、ものづくりを基盤とし、製品がお客様の手に渡り、実際に喜んでいただくところまで関わりたいと考え、自動車メーカーで商品企画に携わる道を選びました。

 社会人になってからは、商品企画、社内システム企画、需給調整、そして念願だったブラジル駐在を経験したほか、社内コンサルティング(業務改善)など、非常に幅広く刺激的なキャリアを積むことができました。
 一方で、キャリア10年目にして、もう一度自分のキャリアを見つめ直し、自分の実力がどのくらい通用するかも試したいという思いから、会社を退職し、MBA取得を志しました。MBA取得中、卒業前のインターンシップ先を探していたところ、ITERに出会いました(インターンシップ体験記)。

MBA取得後に機構職員を志した理由と
活かせると感じたスキルについて教えてください。

 MBA取得後の選択は非常に迷いました。ITERでのインターンシップ以前は、MBA取得後は営利を追求する民間企業で財務管理やビジネス開発に携わりたいと考えていました。
 一方で、フュージョンエネルギーそのものに強い魅力を感じていました。特に、ITERの他の国際機関とは異なる、プロジェクトベースでマイルストーンとゴールがあること、フュージョンエネルギーというゲームチェンジャーに成り得る技術に関わることができる点に惹かれました。さらにITERインターンシップを経て、職員としてであればより自分の価値を発揮できるという手応えを得られたことで、ITER職員に応募を決意しました。加えて、自己成長につながる国際的な環境で働けることや、生涯学び続けたいという自身の価値観と合致していたことも志望動機の一つです。これまでの経験から、私自身は国際的な環境において、より生き生きと働けると感じています。

 応募ポストに活かせると感じていたのは、特定の専門スキルというよりも、これまでのキャリアを通じて培ってきた多面的な視点でした。 
 前職では、データを活用して課題を可視化し改善につなげ、物事を一つの機能だけで捉えるのではなく、組織全体の視点で考えることを身に付けてきました。また、MBAで経営や問題解決手法についても体系的に学んだことで、個別の課題だけでなく、その背景にある組織全体の構造や目的を意識しながら考えるようになりました。
 こうした経験を通じて培った「異なる立場の人々をつなぎながら、より高い視点で組織や課題を捉える姿勢」は、国籍や専門分野の異なる人々が協働するITERでも活かせるのではないかと考えていました。 

選考過程において
特に印象に残っていることはありますか?

 面接選考において印象的なことが2つあります。1つは失敗例で、もうひとつは今でも心に残っている出来事です。 
 1つ目は面接当日に起きたハプニングです。面接用のURLにアクセスできず、急遽スマートフォンに切り替えて面接に臨み、冒頭少しうろたえてしまいました。事前準備として送られてきたURLで接続テストを行うべきでした。
 2つ目は面接中の面接官からの言葉です。こちらから質問する機会に、受験ポストでの最重要なスキルについてお聞きした際、面接官の一人がデータを作っているのは人間であり、詰まるところコミュニケーション能力が重要という趣旨の回答をいただいたのが印象的でした。

面接で気を付けたことはありますか?

 母国語ではない言語で説明しなければならないので、回答は冗長にせず、結論と要点を先に伝えることを心がけました。私の場合は、状況設定質問や行動質問が多かったので、このような質問には、先に要点を伝え、説明を深堀りしていくスタイルで回答しました。こうすることで複雑な問題を整理して論理的に分かりやすく伝える能力を示すことができたと思います。
 なお、面接準備の際には、日本国内機関の面接トレーニングを利用しました。英語面接トレーニングはMBAプログラムの一環で実施したこともありましたが、日本国内機関のフィードバックは具体的で役に立ちました。

 

これまでのキャリアを経て
ITER機構職員の仕事をどのように思っていますか?

  ITERは営利組織ではありませんが、参加極からの拠出金、つまり公金によって運営される世界最大級の国際プロジェクトです。そのため、限られた人・モノ・時間・予算をどのように配分し、最大の成果につなげるかという経営的な視点は、むしろ非常に重要だと感じています。 
 現場がより良い意思決定を行えるように情報や仕組みを整えること。限られた資源を適切に配分し、プロジェクト全体の成果を最大化すること。そして、その成果や進捗を参加極に分かりやすく示し、継続的な理解と支援を得ること。こうした活動の根底には、MBAで学んだ考え方が活きていると感じます。 
 特に私が担当するプロジェクトコントロールやデータ分析、レポーティングの業務では、現場やマネジメント層が適切な判断を下せるよう、複雑な情報を整理し、可視化し、分かりやすく伝えることが求められます。直接ものづくりに携わる立場ではありませんが、プロジェクトの意思決定や運営を支えることを通じて、大規模な国際プロジェクトに貢献できることに大きなやりがいを感じています。 
 また、ITERでは異なる国籍や文化、専門性を持つ人々と日々協働しています。技術的な知識だけでなく、多様な立場の人々とコミュニケーションを取りながら合意形成を進める力や、組織全体を俯瞰して物事を考える力が求められます。その意味で、仕事そのものが自己成長の機会であり、インターン生として外から見ていた頃とは異なる視点でプロジェクトに関われるようになったと感じています。 
 今では、利益を生み出すためではなく、人類共通の課題解決に向けて経営的な視点を活かせることに、ITERならではの面白さを感じています。 

※この項目は、着任後に伺った内容です。

今後、仕事を通じて
どのようなことを実現していきたいですか?

 まず実現したいのは、組織内に蓄積されている膨大なデータを、誰もが意思決定に活用できる環境として整備することです。 
 ITERのような大規模プロジェクトでは日々さまざまなデータが生成されていますが、それらが十分に活用されず、個人や組織の中に埋もれてしまうことも少なくありません。私は、データが発する「声」を可視化し、マネジメント層だけでなく、現場を含むあらゆる階層のスタッフが、タイムリーかつデータドリブンに意思決定できる仕組みを構築したいと考えています。 
 また、近年急速に進化しているAI技術は、こうした働き方を大きく変える可能性を秘めていると感じています。これまでは人が膨大な情報を収集・分析し、レポートとしてまとめる必要がありましたが、今後はAIがデータ分析や異常検知、将来予測、さらには意思決定支援まで担う時代になると思います。 
 その中で重要なのは、AIそのものではなく、AIが活用できるデータや業務プロセスを整備し、組織の知見として活かせる形にすることです。私は、プロジェクトマネジメント、ファイナンス、データベース、システム開発といった知識をさらに深めながら、人とAIがそれぞれの強みを活かして協働できる環境づくりに挑戦していきたいと考えています。 
 ITERは、世界中の専門家が集まり、長期間にわたって複雑なプロジェクトを推進する組織です。そのため、データやAIを活用して効果的な意思決定を生み出す価値は非常に大きいと感じています。 
 そして将来的には、データやAIを活用しながら、組織やプロジェクト全体を俯瞰して意思決定を支える立場へ成長していきたいと考えています。その先で、人類共通の課題であるエネルギー問題の解決に貢献し、フュージョンエネルギーが社会に実装され、世界のあり方を大きく変える瞬間を自分の目で見届けることが私の目標です。 

これからITER機構職員を目指す方々に
メッセージをお願いします。

 私自身、日本と海外での就職活動を経験して感じるのは、就職活動に対する考え方そのものが大きく異なるということです。 
 ITERのような国際機関の採用においても、日本で一般的な新卒一括採用や総合職型の採用とは異なり、基本的にジョブ型です。そのため、将来性やポテンシャルも重要ですが、それ以上に「そのポストに対して自分がどのような価値を提供できるのか」が重視されます。また、実際に就職活動を進める中で強く感じたのが、ネットワーキングの重要性です。人とのつながりから得られる情報や機会が、その後のキャリア形成に大きな影響を与えることも少なくありません。 
 そのため、まずは募集要項(Job Description)をしっかり読み込み、自分の経験やスキルがどのように活かせるのかを具体的に説明できるよう準備することが大切です。また、可能であればITER職員や、国際機関、海外企業で働く方々と交流し、実際の仕事内容や職場環境について話を聞いてみることをおすすめします。募集要項だけでは分からない現場の情報や組織文化に触れることで、自分がどのように貢献できるのかを、より具体的にイメージできるようになるはずです。加えて、応募要件として求められる知識や資格がある場合は、目標から逆算し、早い段階から計画的に準備を進めておくとよいでしょう。幸い、日本人の応募者にはITER日本国内機関による応募支援制度があり、非常に恵まれた環境が整っています。こうした制度を積極的に活用できることは、大きな利点だと思います。
 
 最後に、主体性を持って行動することは、ITERで働くうえでも欠かせない要素だと考えています。自ら情報を集め、課題を見つけ、周囲と協力しながら解決策を形にしていくことが求められます。完璧な準備が整うのを待つのではなく、「今の自分はどのような価値を提供できるのか」「目標を実現するために何が不足しているのか」を考えながら、一歩踏み出してみてください。その積み重ねが、ITERで活躍するための大きな力になると思います。 
 いつかITERでご一緒できる日を楽しみにしています。 


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