社会的需要×興味×自分の強みが重なる場所を見つけた結果が「ITER」
渡邉幹仁さん(2025年6月 ITER機構着任)
合格ポジション:Mechanical Engineer
「配管エンジニア」として、常に海外のLNGプラントや製油所の新設EPC(設計・調達・建設)プロジェクトに携わってこられた渡邉さん。配管設計という職にたどり着いたいきさつや、海外案件を任されるほどの英語力をどのように身に付けたのか、ITER職員になるための要素をひとつひとつ獲得されたストーリーをご覧ください。
インタビュー日:2025年4月24日
学生時代のどのような興味から
配管設計業務につながったのですか?
高校時代、ボールを特定の角度とスピードで投げると落ちる場所や時間が決まる、など自然現象を数式で表現できる物理に魅力を感じ、大学では機械工学を選びました。
研究ではスケールの大きいテーマに取り組みたいという気持ちがあり、自然エネルギーを利用して栄養塩に富む海洋深層水を表層に汲み上げる研究をしていました。海洋実験では300メートルのパイプをマリアナ海域(西太平洋)に設置し、その効果を確認しました。
また、将来はエネルギー分野で世界にインパクトを与える仕事に携わりたいと考え、大型プラントを建設している企業のインターンシップに参加しました。インターンシップでは配管設計部門に配属され、プラントを形づくる配管設計業務に携わりました。配管レイアウトの検討では、安全性・施工性・保守性・経済性など多くの要素を考慮しながら最適な設計を追求する必要があり、その奥深さに魅力を感じました。この経験から配管設計に進みました。
海外留学での学びについて教えてください。
大学時代にイギリスに1年間留学しました。留学の目的は専門分野の習得ではなく、英語力の習得でした。5年かけて卒業しても問題ないと考え、1年間を英語学習に費やしました。大学受験でも英語が弱かったので、この1年間は英語力アップという意味では、とても有意義な時間でした。この1年が無かったら、海外案件の業務やましてITERで働くことは難しかったかもしれません。
また、沢木耕太郎の「深夜特急」の影響を受けてバックパックで世界各地を旅したり、国際寮で2年間生活したりする中で、様々な人と交流をしてきました。これにより、人はそれぞれ異なる考えを持っていることを理解することができ、とても有意義な経験だったと考えております。
これまでのお仕事で
印象的だったエピソードを教えてください。
これまで、配管の強度を確認する配管応力解析、配管サポートの設計・強度評価、配管特殊サポートの購入やサポートベンダーとの調整を行ってきました。
その中で印象的だった出来事は、直近で関わった洋上LNGプラントの設計です。プロジェクトそのものも印象的ですが、その1つ前のプロジェクトで私が直面した課題「チームとしての成果を効果的に生み出すこと」を、このプロジェクトで乗り越えられたことが非常に印象に残っています。うまくいかない原因を考えたときに、一人で頑張りすぎて、チームのメンバーをうまく生かし切れていなかったという反省にたどり着きました。
それを、このプロジェクトで活かし、マネジメント業務に注力し、チームが活躍できるような環境づくりに徹した結果、高品質・スケジュール通りの成果を出すことができたのです。
若い頃は技術力向上に力を入れていましたが、プロジェクトをまとめる経験を通して、設計を別の視点で見られるようになりました。その点で、このプロジェクトは印象深いものになっています。チーム力の重要性に気づかせてくれたのは、ある先輩であり、その方からいただいた本は、私にとっての宝物になっています。
ITER職員公募を知ったきっかけと
挑戦に対する思いを教えて下さい
職場で、元ITER職員の方に出会ったことがきっかけでした。当時、ある程度自分の技術力は身についていて、自分の技術を使って「今実現できていないものを生み出してみたい」という思いが漠然とありました。そんな中、元ITER職員の話を聞いて、自分にもできることがあるのではないかと感じました。その後挑戦を重ね3度目の応募で合格を掴むことができました。
任期がある国際機関への挑戦について、子供もいますがリスクを取らないことが最大のリスクであり、同じことを続けることは、「後退」を意味すると考えています。例えば、Oil & GasのEPC業界(※)では海外コントラクターとの競争が激化しており、業務改善が求められております。私が携わった洋上のプロジェクトでは、新しいアイデアを積極的に取り入れて設計した結果、予定通りに設計を完遂できました。私の経験では、物事がうまく進むときは積極的な行動を取っている場合が多く、不安はありません。この5年間で新たな知見や経験を積むことで、次のステップにも確実に生かせると考えています。
※EPC業界:大型プラントや発電所などの建設において、「設計(Engineering)・調達(Procurement)・工事(Construction)」の一連のプロセスを一括で行う業界のこと。
実際にITERで働いてみていかがですか?
実際に働いてみて感じる大きな違いは、EPC企業では豊富な実績に基づく確立された遂行モデルがある一方で、ITERは世界初の核融合実験炉を建設しフュージョンエネルギーを実証するプロジェクトであり、前例のない課題に向き合う必要があることです。EPC企業では、過去の経験や標準化されたプロセスを活用しながらプロジェクトを効果的に進めることができます。一方、ITERでは前例のない設備を扱うため、設計や建設の過程で新たな技術課題や要求事項の変化に直面することが少なくありません。そのため、計画を忠実に実行するだけでなく、状況の変化に応じて柔軟に対応しながらプロジェクトを前進させることが求められます。PMBOK第8版(※)では、固定的なプロセスよりも価値の提供や変化への適応が重視されています。ITERでの業務はまさにその考え方を実感しており、関係者と協力しながら不確実性を管理し、最適な解決策を模索することが重要です。前例のない挑戦だからこそ難しさもありますが、その分、自分たちが将来のフュージョンエネルギー開発の基準や知見を築いているという実感があり、大きなやりがいを感じています。
※この項目は、着任後に伺った内容です。
※PMBOK:Project Management Body of Knowledge
今後の目標や将来的なキャリアビジョン含め
キャリアについて何を大切にしていますか?
私がキャリアを考える上での軸は3つあります。1つ目は社会から求められている、つまり需要があること、2つ目は自分が興味を持てること、好きなこと、3つ目は自分の強みを活かせることです。この3つの要素が重なる場所を見つけた結果、今の職場にたどり着きました。
2034年の運転開始に向けて、まずは要求品質を確保し、スケジュールおよび予算通りに機械組立を完遂させたいです。そのために多くの関係者と協力して、一歩ずつマイルストーンを達成していきたいです。そして、任期中に核融合炉の機械設計と建設の知見を習得し、ITERの次の開発段階となる原型炉や商用炉の設計や建設に携わりたいと考えています。
これからITER機構職員を目指す方々に
メッセージをお願いします。
日本国内機関からの手厚い支援のおかげで、合格の可能性が高まったと感じています。ぜひ積極的に支援を受けてください。また、たとえ一度で結果が出なくても、粘り強く挑戦を重ねることで道は開けると思います。南フランスで核融合実験炉を一緒に建設しましょう!
量子科学技術研究開発機構
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