澁井祐花さん|高校生インターンシップ @ ITER 日記
2026年6月29日~7月10日 ITER機構インターン生
初めまして!澁井祐花(しぶい ゆうか)と申します。中国にあるインターナショナルスクール、The British School of Guangzhouに通っている13年生(高校3年生相当)です。この度、6月29日(月)から7月10日(金)まで、ITERでインターンシップをさせていただくことになりました。
2025年7月に、文部科学省でキャリア実習を経験した際、ITERについて教えていただき、持続可能で安全なエネルギーの開発のために、世界最大規模の国際協力を行なっているという点に強く惹かれました。その後、リサーチを進める中で、高校生が参加できるインターンシップ(Job Shadowing)があることを知り、応募しました。
将来は、科学外交を通じて、原子力技術の進歩や、安全・平和利用に携わりたいと考えています。ITERではまさに、多様な文化背景を持つ方々が協力して、さまざまな課題に取り組んでいます。大学進学を控えている今、それを現場でみて体感し、より目的意識を持って今後の学業に取り組みたいと思っています。よろしくお願いします!
Scene 01|はじめてのITERで感じたこと
インターン初日。
今日は、挨拶回りとオフィス見学から始まりました。
ITERの戦略官やMCT(Magnet Cold Test:磁場冷却試験)プロジェクトの方々、JADA(ITER日本国内機関)の方々など、いろいろなポジションで活躍されている方にお会いできました。皆さんとても暖かく迎えてくださいました。
これから2週間作業をさせていただくオフィスは、席の後ろに大きな窓ガラスがあり、青空と建屋が見渡せる、とても開放感のある快適な空間でした。
同じオフィスにはフランス人とインド人の大学生インターンもいて、インターンシップに参加された経緯などについても語り合い、本当にグローバルプロジェクトにいるんだなぁと実感しました。
Scene 02|多様な働き方と国際的な環境
お昼には、日本人職員約30名との食事会がありました。ITERには、直接入社された方だけでなく、各国の機関から出向で来られた方など、さまざまなルートで来られた方がいます。しかし、ITERに来れば、同じように仕事を任されるため、フレキシブルに適応できる能力が求められると知りました。
また、各国ごとに分かれて仕事をするのではなく、多様な文化的背景を持つ方々が一緒に意思決定を行っているため、新鮮で刺激的な職場だと感じました。

Scene 03|最前線の施設で感じたリアル
JADA長の松本様が、核融合研究の現在と未来について、ご自身の経歴も交えながらお話しくださいました。高校時代に核融合の道に進むことを決め、その後、文科省への出向などを経て、今は核融合の国際協力が円滑に進むよう調整されているという点は、まさに私が将来携わりたいと思っている仕事に近く、自分の方向性を考える上で、参考になるお話でした。
また、研究開発と意思決定の関係についてもお話を伺いました。研究の現場を理解していることが、より正確な判断につながることや、まだ完成していない新しい分野だからこそ、物事を多角的に考えることが大切だということを学びました。将来は科学外交や原子力分野の国際協力に携わりたいと考えているため、とても印象に残るお話でした。自分が進みたい方向について、改めて考えるきっかけにもなりました。
その後、supervisorの中本様とMCTF(磁場冷却試験施設)の見学を行いました。実際にTF(Toroidal Field)コイルを目で見て、手で触れることもでき、自分が本当にITERという大きなプロジェクトの現場に来ているのだと実感した一日でした。
Scene 04|国際協力と意思決定を支える「考える力」
インターン2日目!
今朝は、ITER副建設長の大前様と面談をしました。
お話の中で特に印象的だったのは、「相互依存」についてです。
私は以前、国同士が互いに必要とし合う関係を作ることが平和につながると考えたことがあります。それをお話ししたところ、相互依存は平和があってこそ成り立つものであり、その平和を維持するためには、まず各国が安定し、自立していることが重要であること、そして国際協力はその土台の上に築かれるものであるというお話を伺いました。お話を通じて、ITERは本当にそのような自立の上で成り立っている協力だと思いました。
また、今後の学びについてのアドバイスとして「歴史」を学ぶべきだとおっしゃっていました。 歴史を学ぶことは、過去の人々の経験や選択から学び、それを今後の判断に活かしていくことにつながるというお話が特に印象に残りました。また、新聞などで目にする出来事だけを見るのではなく、その背景や原因まで考える批判的な視点を持つことも大切だと教えていただきました。
面談を通じて、歴史から学び、批判的・多角的な視点を持つことが意思決定を行う上で最も重要なことだと感じました。

Scene 05|世界初の計測装置が生まれる現場
午後にはQST(量子科学技術研究開発機構(ITER日本国内機関))の石川様とITERの西澤様から、ITERで使われる計測装置について説明していただきました。
その中で、特に印象に残ったのは「First of a kind」、世界で初めて作られるものだということです。 ITERでは、燃焼プラズマというこれまでにない非常に厳しい環境の中で、さまざまな計測を行わなければなりません。 熱、放射線、電磁力、設置場所、他の機器との関係など、考えなければならない条件は非常に多く、それぞれが相互作用しあう中、ある計測装置の設計が進んだ後に、他の機器の条件が変われば、再び設計を見直さなければならないこともあります。
お話を通して、ITERの難しさは、単に高度な技術が必要なことだけではなく、多くの国や組織が複雑に影響し合う中で、一つの大きな目標に向かって調整し続けることだと思いました。また、日々の業務では目の前の課題や作業内容だけでなく、その背景にある目的や意義を理解することが重要であるというお話も伺いました。
もちろんITERで行われる調整は、国際プロジェクトだからこそ、より困難になるし、非効率なことも多々あると思います。しかし、この規模の国際プロジェクトを成し遂げること自体に意義があると思いました。

Scene 06|誰もが力を発揮できる環境をつくる仕事
インターン3日目!
今日は朝一番に、Engagement & Inclusionのお仕事をされている武田様とお話しする機会をいただきました。
実は今回ITERに来て初めて「Engagement & Inclusion Officer」という人事的な職業を知り、ぜひ詳しくお話を伺いたくて、今回の面談をセッティングしていただきました。
お話を伺い、Engagement & Inclusionとは単に男女比率を均等にしたり、それぞれの極から来ている職員の割合を調整したりするお仕事ではなく、誰もが公平に機会を得られ、一人ひとりが自分の能力を最大限発揮できる環境をつくるための仕事であることを知りました。多様な国や文化の人々が集まるITERだからこそ、必要不可欠な役割なのだと強く感じました。
Scene 07|ITERでしか確かめられないブランケットの性能
その後は、核融合炉のブランケットの研究をされていて、現在はITERで試験に向けた準備を進められている谷川様よりお話を伺いました。
ブランケットは、他のどの機器よりも多くの役割を担う機器です。しかし、実際に運転される環境と同じ条件で試験を行えるのはITERだけだそうです。そのため、実際に運転が始まって、その性能を検証できる日がとても楽しみだと話されていました。
改めて、ITERが核融合発電の実現に向けて大きな役割を果たしていると感じました。
Scene 08|巨大な冷却設備が支える超伝導磁石
午後は、Cryoplant Responsible Officerの阿部様にITERのクライオプラント(超伝導磁石を冷却するための設備)をご案内いただきました。冷却装置の隣にいるのに、日差しが強くとても暑かったです。外に熱を逃さない断熱機能に関しては素晴らしいと思ったのですが・・・
実際に見てみると、その設備全体の大きさに圧倒されました。超伝導コイルを安定して運転するためには、大規模で精密な冷却インフラが必要であり、十数メートルにも及ぶ装置を極低温(−269℃)に保つためには莫大な電力が必要になるそうです。そのため、もし常温超伝導や、今より少しでも高い温度で超伝導を実現できれば、冷却コストを大幅に削減できることから、その研究開発も非常に重要だというお話を伺いました。
また、万が一
クエンチ(※)が起こり、ヘリウムガスが放出された際にガスを受け止める巨大な真空容器「クエンチタンク」も見学しました。この設備も、クライオプラントの運転開始後は、緊急時に備えて常に冷却し続ける必要があるそうです。今回の見学を通して、それぞれの設備が最悪の事態まで想定されており、プラントの安全性、信頼性、そして高価なヘリウムガスを漏洩させない巧みな設計になっていることを知りました。
※クエンチ(Quench): 超伝導磁石は、極低温温度、電流密度、磁場強度などの条件が一定の範囲内に保たれている限り超伝導状態を維持できます。しかし、これらの条件を外れると、磁石は通常の電気抵抗を持つ状態へ移行し、大電流によって発熱や電圧上昇が発生します。この超伝導状態から抵抗状態への移行現象を「クエンチ」と呼びます。

👆ヘリウムコールドボックスの前で撮った写真です!
Scene 09|安全を最優先にするITERの文化
インターン4日目!
今日は、午前中2時間にわたって、Newcomers safety induction(新しい職員やインターン生が受ける安全講座)に参加しました。ITERには様々な国の人がいるため、みなさん安全に対する感覚が違います。施設での作業は危険を伴う仕事であるため、常にルールを意識し、慌てず理性的に判断することが大切だと強調していました。講座の最後にはなんとクイズがあって、一人一人の点数が表示され、合格できなかったら追加補習があるとか・・・それを聞いて、結構ハラハラしましたが、無事合格できました。笑
多くのITER職員の方と一緒に安全教育を受けて、なんだか社員になったような気持ちを味わえた時間でした!
Scene 10|食堂から見えたITERの多様性
そして今日は、ITERでのお昼ご飯も紹介したいと思います!
ここでは毎日いろんな国のメニューが用意されていて、その中から主食、デザート、飲み物、フルーツ、サラダなどを選ぶことができます。この4日間、毎日違う物を試すようにしていますが、どれもとても美味しかったです。毎日お昼ご飯を何にするか悩むのも、一つの楽しみです🎵



👆ITERの食堂でのお昼はこんな感じです。チキンの上にかかったソースが初めて食べる味で、新鮮でした✨
ちなみに、食堂での過ごし方も千差万別。同じプロジェクトを進めている各国のメンバーで集まって食べる人たち、同じ国のメンバーで食べる人、インターン生の集まりで食べる人とさまざまです。食後にゆっくりコーヒーを飲んでから仕事に戻る人も多く、自由で多様性にあふれた職場だなといつも感じています。
Scene 11|世界レベルの設備を支える変電システム
満腹になったところで、午後は変電設備の見学でした!主に超伝導コイルの変電設備を見学したのですが、TF(Toroidal Field)以外のコイルは、プラズマを閉じ込める磁場を正確に調整するために、それぞれに電源がついていました。

👆これが一つのPF(Poloidal Field)コイルの変電装置です。このサイズ感のものが20個くらい並んでいました。
また、設備の磁場耐性テストを行うための装置も同じ建屋に入っていました。5 mTから275 mTまで、多方向からの磁場耐性をテストできる装置で、世界で見てもこれほどの装置は少ないそうです。ITERは本当に世界一が多すぎる・・・!
Scene 12|フュージョンエネルギーの未来とITERが果たす役割
インターン5日目!
本日は、Mechanical Engineerの薗様よりトリチウムプラントについて、鎌田副機構長より核融合とITERの詳しいお話を伺いました。フュージョンエネルギーの歴史・原理、ITERの様々な役割、そしてその先の未来まで、多くのことを学ぶことができました。
ITERは実験炉であるため、あらゆる場所で冗長性が高く設計されていて、どれほどの磁場の乱れや誤差を許容できるかもここでテストするそうです。トロイダルコイルひとつをとっても精度は極限まで高められていて、それが原型炉や実証炉での無駄のない設計につながっていくという内容が特に印象的でした。
また、日本の技術の高さがITERで証明され、市場を作り出す場にもなっているのではないか、とお話を聞きながら感じました。たとえばダイバータで使われるタングステンモノブロックの製造において、日本企業が作った製品の精度や性能が非常に高く、欧州が担当する部品にも採用されるようです。ITERで認められることは、日本製のものが将来世界のサプライチェーンの中に組み込まれることにも繋がると思います。
Scene 13|今日のITERランチ
お昼は、ハンバーガーをいただきました。お肉がジューシーで美味しかったです😋

Scene 14|建設中のトカマクが教えてくれたこと
午後は「Mandatory induction training visit」という、ITER職員やインターン生が参加する組立ホールのツアーに行きました。ガイドをしてくださったインド人の方が、ITERの小話なども交えながら、ホール全体について、そしてITERそのものについて色々と教えてくださり、楽しい時間を過ごせました。

👆ツアーに参加したメンバーで、ITERトカマクが見える窓の前で撮った集合写真です!
写真で見ただけでは分からない感動がありました。この途方もない規模のものを、世界中で協力して製作し、据え付け誤差はわずか1 mm程度に抑えることが求められているそうです。少量の変形が積み重なれば、それだけの誤差になり得るため、どれほどの職人の力量が試されるのか、想像もつきません。
鎌田副機構長が今日、何かを実現するには物理だけではなく、工学と物理が一緒になっていくことが大事。ものを作るとなれば、技術や工学の制限を考慮した設計が不可欠なため、両方の知識を知り、それらを組み合わせて実現させることが大切だと話されていて、実際に建設中の核融合炉を目の当たりにしたら、その言葉が強く心に響きました。 物理だけでも工学だけでもなく、そして一国だけでも成し得ない、そんな巨大プロジェクトの核心に少しだけ触れられた気がした、学びと刺激に満ちた1週間でした。