澁井祐花さん|高校生インターンシップ @ ITER 日記
2026年6月29日~7月10日 ITER機構インターン生
初めまして!澁井祐花(しぶい ゆうか)と申します。中国にあるインターナショナルスクール、The British School of Guangzhouに通っている13年生(高校3年生相当)です。この度、6月29日(月)から7月10日(金)まで、ITERでインターンシップをさせていただくことになりました。
2025年7月に、文部科学省でキャリア実習を経験した際、ITERについて教えていただき、持続可能で安全なエネルギーの開発のために、世界最大規模の国際協力を行なっているという点に強く惹かれました。その後、リサーチを進める中で、高校生が参加できるインターンシップ(Job Shadowing)があることを知り、応募しました。
将来は、科学外交を通じて、原子力技術の進歩や、安全・平和利用に携わりたいと考えています。ITERではまさに、多様な文化背景を持つ方々が協力して、さまざまな課題に取り組んでいます。大学進学を控えている今、それを現場でみて体感し、より目的意識を持って今後の学業に取り組みたいと思っています。よろしくお願いします!
Scene 01|はじめてのITERで感じたこと
インターン初日。
今日は、挨拶回りとオフィス見学から始まりました。
ITERの戦略官やMCT(Magnet Cold Test:磁場冷却試験)プロジェクトの方々、JADA(ITER日本国内機関)の方々など、いろいろなポジションで活躍されている方にお会いできました。皆さんとても暖かく迎えてくださいました。
これから2週間作業をさせていただくオフィスは、席の後ろに大きな窓ガラスがあり、青空と建屋が見渡せる、とても開放感のある快適な空間でした。
同じオフィスにはフランス人とインド人の大学生インターンもいて、インターンシップに参加された経緯などについても語り合い、本当にグローバルプロジェクトにいるんだなぁと実感しました。
Scene 02|多様な働き方と国際的な環境
お昼には、日本人職員約30名との食事会がありました。ITERには、直接入社された方だけでなく、各国の機関から出向で来られた方など、さまざまなルートで来られた方がいます。しかし、ITERに来れば、同じように仕事を任されるため、フレキシブルに適応できる能力が求められると知りました。
また、各国ごとに分かれて仕事をするのではなく、多様な文化的背景を持つ方々が一緒に意思決定を行っているため、新鮮で刺激的な職場だと感じました。

Scene 03|最前線の施設で感じたリアル
JADA長の松本様が、核融合研究の現在と未来について、ご自身の経歴も交えながらお話しくださいました。高校時代に核融合の道に進むことを決め、その後、文科省への出向などを経て、今は核融合の国際協力が円滑に進むよう調整されているという点は、まさに私が将来携わりたいと思っている仕事に近く、自分の方向性を考える上で、参考になるお話でした。
また、研究開発と意思決定の関係についてもお話を伺いました。研究の現場を理解していることが、より正確な判断につながることや、まだ完成していない新しい分野だからこそ、物事を多角的に考えることが大切だということを学びました。将来は科学外交や原子力分野の国際協力に携わりたいと考えているため、とても印象に残るお話でした。自分が進みたい方向について、改めて考えるきっかけにもなりました。
その後、supervisorの中本様とMCTF(磁場冷却試験施設)の見学を行いました。実際にTF(Toroidal Field)コイルを目で見て、手で触れることもでき、自分が本当にITERという大きなプロジェクトの現場に来ているのだと実感した一日でした。
Scene 04|国際協力と意思決定を支える「考える力」
インターン2日目!
今朝は、ITER副建設長の大前様と面談をしました。
お話の中で特に印象的だったのは、「相互依存」についてです。
私は以前、国同士が互いに必要とし合う関係を作ることが平和につながると考えたことがあります。それをお話ししたところ、相互依存は平和があってこそ成り立つものであり、その平和を維持するためには、まず各国が安定し、自立していることが重要であること、そして国際協力はその土台の上に築かれるものであるというお話を伺いました。お話を通じて、ITERは本当にそのような自立の上で成り立っている協力だと思いました。
また、今後の学びについてのアドバイスとして「歴史」を学ぶべきだとおっしゃっていました。 歴史を学ぶことは、過去の人々の経験や選択から学び、それを今後の判断に活かしていくことにつながるというお話が特に印象に残りました。また、新聞などで目にする出来事だけを見るのではなく、その背景や原因まで考える批判的な視点を持つことも大切だと教えていただきました。
面談を通じて、歴史から学び、批判的・多角的な視点を持つことが意思決定を行う上で最も重要なことだと感じました。

Scene 05|世界初の計測装置が生まれる現場
午後にはQST(量子科学技術研究開発機構(ITER日本国内機関))の石川様とITERの西澤様から、ITERで使われる計測装置について説明していただきました。
その中で、特に印象に残ったのは「First of a kind」、世界で初めて作られるものだということです。 ITERでは、燃焼プラズマというこれまでにない非常に厳しい環境の中で、さまざまな計測を行わなければなりません。 熱、放射線、電磁力、設置場所、他の機器との関係など、考えなければならない条件は非常に多く、それぞれが相互作用しあう中、ある計測装置の設計が進んだ後に、他の機器の条件が変われば、再び設計を見直さなければならないこともあります。
お話を通して、ITERの難しさは、単に高度な技術が必要なことだけではなく、多くの国や組織が複雑に影響し合う中で、一つの大きな目標に向かって調整し続けることだと思いました。また、日々の業務では目の前の課題や作業内容だけでなく、その背景にある目的や意義を理解することが重要であるというお話も伺いました。
もちろんITERで行われる調整は、国際プロジェクトだからこそ、より困難になるし、非効率なことも多々あると思います。しかし、この規模の国際プロジェクトを成し遂げること自体に意義があると思いました。

Scene 06|誰もが力を発揮できる環境をつくる仕事
インターン3日目!
今日は朝一番に、Engagement & Inclusionのお仕事をされている武田様とお話しする機会をいただきました。
実は今回ITERに来て初めて「Engagement & Inclusion Officer」という人事的な職業を知り、ぜひ詳しくお話を伺いたくて、今回の面談をセッティングしていただきました。
お話を伺い、Engagement & Inclusionとは単に男女比率を均等にしたり、それぞれの極から来ている職員の割合を調整したりするお仕事ではなく、誰もが公平に機会を得られ、一人ひとりが自分の能力を最大限発揮できる環境をつくるための仕事であることを知りました。多様な国や文化の人々が集まるITERだからこそ、必要不可欠な役割なのだと強く感じました。
Scene 07|ITERでしか確かめられないブランケットの性能
その後は、核融合炉のブランケットの研究をされていて、現在はITERで試験に向けた準備を進められている谷川様よりお話を伺いました。
ブランケットは、他のどの機器よりも多くの役割を担う機器です。しかし、実際に運転される環境と同じ条件で試験を行えるのはITERだけだそうです。そのため、実際に運転が始まって、その性能を検証できる日がとても楽しみだと話されていました。
改めて、ITERが核融合発電の実現に向けて大きな役割を果たしていると感じました。
Scene 08|巨大な冷却設備が支える超伝導磁石
午後は、Cryoplant Responsible Officerの阿部様にITERのクライオプラント(超伝導磁石を冷却するための設備)をご案内いただきました。冷却装置の隣にいるのに、日差しが強くとても暑かったです。外に熱を逃さない断熱機能に関しては素晴らしいと思ったのですが・・・
実際に見てみると、その設備全体の大きさに圧倒されました。超伝導コイルを安定して運転するためには、大規模で精密な冷却インフラが必要であり、十数メートルにも及ぶ装置を極低温(−269℃)に保つためには莫大な電力が必要になるそうです。そのため、もし常温超伝導や、今より少しでも高い温度で超伝導を実現できれば、冷却コストを大幅に削減できることから、その研究開発も非常に重要だというお話を伺いました。
また、万が一
クエンチ(※)が起こり、ヘリウムガスが放出された際にガスを受け止める巨大な真空容器「クエンチタンク」も見学しました。この設備も、クライオプラントの運転開始後は、緊急時に備えて常に冷却し続ける必要があるそうです。今回の見学を通して、それぞれの設備が最悪の事態まで想定されており、プラントの安全性、信頼性、そして高価なヘリウムガスを漏洩させない巧みな設計になっていることを知りました。
※クエンチ(Quench): 超伝導磁石は、極低温温度、電流密度、磁場強度などの条件が一定の範囲内に保たれている限り超伝導状態を維持できます。しかし、これらの条件を外れると、磁石は通常の電気抵抗を持つ状態へ移行し、大電流によって発熱や電圧上昇が発生します。この超伝導状態から抵抗状態への移行現象を「クエンチ」と呼びます。

👆ヘリウムコールドボックスの前で撮った写真です!
Scene 09|安全を最優先にするITERの文化
インターン4日目!
今日は、午前中2時間にわたって、Newcomers safety induction(新しい職員やインターン生が受ける安全講座)に参加しました。ITERには様々な国の人がいるため、みなさん安全に対する感覚が違います。施設での作業は危険を伴う仕事であるため、常にルールを意識し、慌てず理性的に判断することが大切だと強調していました。講座の最後にはなんとクイズがあって、一人一人の点数が表示され、合格できなかったら追加補習があるとか・・・それを聞いて、結構ハラハラしましたが、無事合格できました。笑
多くのITER職員の方と一緒に安全教育を受けて、なんだか社員になったような気持ちを味わえた時間でした!
Scene 10|食堂から見えたITERの多様性
そして今日は、ITERでのお昼ご飯も紹介したいと思います!
ここでは毎日いろんな国のメニューが用意されていて、その中から主食、デザート、飲み物、フルーツ、サラダなどを選ぶことができます。この4日間、毎日違う物を試すようにしていますが、どれもとても美味しかったです。毎日お昼ご飯を何にするか悩むのも、一つの楽しみです🎵



👆ITERの食堂でのお昼はこんな感じです。チキンの上にかかったソースが初めて食べる味で、新鮮でした✨
ちなみに、食堂での過ごし方も千差万別。同じプロジェクトを進めている各国のメンバーで集まって食べる人たち、同じ国のメンバーで食べる人、インターン生の集まりで食べる人とさまざまです。食後にゆっくりコーヒーを飲んでから仕事に戻る人も多く、自由で多様性にあふれた職場だなといつも感じています。
Scene 11|世界レベルの設備を支える変電システム
満腹になったところで、午後は変電設備の見学でした!主に超伝導コイルの変電設備を見学したのですが、TF(Toroidal Field)以外のコイルは、プラズマを閉じ込める磁場を正確に調整するために、それぞれに電源がついていました。

👆これが一つのPF(Poloidal Field)コイルの変電装置です。このサイズ感のものが20個くらい並んでいました。
また、設備の磁場耐性テストを行うための装置も同じ建屋に入っていました。5 mTから275 mTまで、多方向からの磁場耐性をテストできる装置で、世界で見てもこれほどの装置は少ないそうです。ITERは本当に世界一が多すぎる・・・!
Scene 12|フュージョンエネルギーの未来とITERが果たす役割
インターン5日目!
本日は、Mechanical Engineerの薗様よりトリチウムプラントについて、鎌田副機構長より核融合とITERの詳しいお話を伺いました。フュージョンエネルギーの歴史・原理、ITERの様々な役割、そしてその先の未来まで、多くのことを学ぶことができました。
ITERは実験炉であるため、あらゆる場所で冗長性が高く設計されていて、どれほどの磁場の乱れや誤差を許容できるかもここでテストするそうです。トロイダルコイルひとつをとっても精度は極限まで高められていて、それが原型炉や実証炉での無駄のない設計につながっていくという内容が特に印象的でした。
また、日本の技術の高さがITERで証明され、市場を作り出す場にもなっているのではないか、とお話を聞きながら感じました。たとえばダイバータで使われるタングステンモノブロックの製造において、日本企業が作った製品の精度や性能が非常に高く、欧州が担当する部品にも採用されるようです。ITERで認められることは、日本製のものが将来世界のサプライチェーンの中に組み込まれることにも繋がると思います。
Scene 13|今日のITERランチ
お昼は、ハンバーガーをいただきました。お肉がジューシーで美味しかったです😋

Scene 14|建設中のトカマクが教えてくれたこと
午後は「Mandatory induction training visit」という、ITER職員やインターン生が参加する組立ホールのツアーに行きました。ガイドをしてくださったインド人の方が、ITERの小話なども交えながら、ホール全体について、そしてITERそのものについて色々と教えてくださり、楽しい時間を過ごせました。

👆ツアーに参加したメンバーで、ITERトカマクが見える窓の前で撮った集合写真です!
写真で見ただけでは分からない感動がありました。この途方もない規模のものを、世界中で協力して製作し、据え付け誤差はわずか1 mm程度に抑えることが求められているそうです。少量の変形が積み重なれば、それだけの誤差になり得るため、どれほどの職人の力量が試されるのか、想像もつきません。
鎌田副機構長が今日、何かを実現するには物理だけではなく、工学と物理が一緒になっていくことが大事。ものを作るとなれば、技術や工学の制限を考慮した設計が不可欠なため、両方の知識を知り、それらを組み合わせて実現させることが大切だと話されていて、実際に建設中の核融合炉を目の当たりにしたら、その言葉が強く心に響きました。 物理だけでも工学だけでもなく、そして一国だけでも成し得ない、そんな巨大プロジェクトの核心に少しだけ触れられた気がした、学びと刺激に満ちた1週間でした。
Scene 15|フュージョンエネルギーの未来と、これから求められる人材
インターン6日目!
今朝は、ITER創始者の一人であるNeil Mitchell様と面談する機会をいただきました。Mitchell様が思うフュージョンエネルギーとITERの展望、そしてこれからの社会で必要な人材など、さまざまな角度からお話を伺うことができました。長年フュージョンエネルギーに携わってきた人に自分の考えや方向性を伝えてアドバイスをいただけるのは、やはりITERに来たからこそできたことだと思います。

👆一階にあるカフェテリアでコーヒーを飲みながらお話をしました。
Scene 16|3D技術が変えるものづくりの現場
その後、Mechanical Technicianの川村様に3Dオブジェクトのアニメーション作りを教えていただきました。実際の作業を3D動画にし、解説をつけることで、工程が一段と理解しやすくなります。
また、現在取り組んでいる建設工事におけるモジュールコンセプトを教えていただきました。これは今まで現場で組み立てるのが当たり前だった仕事を、できるだけ工場で完成させてから納入するという方法です。そこで実際アニメーションや3Dプリンターなどを使って、最大でどれくらいの大きさのものを建物内に入れられるか、どの順序で入れるべきかをテストします。工場で多くの作業を完成できれば、人件費も安くなり、工期も早く、品質も格段に良くなるそうです。
お話を聞いていて印象的だったのは、ITERでの仕事は自分で目標を立ててそれに向かって行動できるという自由さです。川村様はご自身の使命、目標、それへ向かう明確な方針をはっきりと持っておられて、それを実現できるように積極的に行動を起こしていました。


👆川村さんとの話の後、3Dプリンターで作ったトリチウムプラントの模型を組み立ててみました。全体を俯瞰してみられてサイズ感もすごく分かりやすく、便利さを体感できました!
Scene 17|ITERを支える調達と契約のしくみ
午後はITERで調達をされているSection Leaderの木村様からお話を伺い、調達の仕組み、契約の仕方などについて知ることができました。DA(Domestic agency)だけではなくITERが直接企業と契約をして、設計から組み立てまで担当している領域もたくさんあるとのこと。契約で支払われるお金は、各国DAからのお金、つまり税金であるため、必要なものはホームページに掲載し、Calls for Tender(入札依頼)という形式で企業を募り、提出したサンプルや価格などを見比べてどの企業と契約するかを決めるそうです。普通の企業とは違い、国の機関のような透明性の高い仕組みになっています。
今日は、ITERの技術面ではなく、モジュールコンセプトや調達、契約といった運営のしくみについて学ぶことができ、各部署の役割と連携をもう少し広い視点で考えられるようになったと感じます。
Scene 18|真空実験室で学ぶ「見えない漏れ」を見つける技術
インターン7日目!
今日は朝から、Vacuum Laboratoryの見学に行きました。ここでは主にリーク試験(漏れがないかを確認する試験)が行われています。解析まで行えるデジタル顕微鏡やヘリウムリークディテクタ、シールの強度試験装置など、さまざまな機器があり、ガイドしてくださった方がそれぞれの役割や仕組みについて詳しく説明してくださいました。教科書では学んだものの、実際に見たことのなかった機器にも触れることができ、これまで学んできた知識への理解をさらに深める機会となりました。


👆見学の最後には、液体窒素とマンゴージュースを使って作ったシャーベットをみんなでいただきました。ランチ前だったこともあり、一段と美味しく感じました。
Scene 19|国際協力を成功させるために必要なこと
午後は、Magnet Delivery Projectのプロジェクトリーダーを務められているAlexander Vostner様よりお話を伺いました。国際協力において主に大切なのは、多様なアイデアや意見を、参加する全員が納得できる形へまとめていくことだと、ITERでの実例を交えながら教えてくださいました。さまざまな国がそれぞれの立場や考えを持っているため、最終的な結論を決める際には、できるだけ多くの国が自分たちの意見が反映されていると感じられる合意形成が重要になるそうです。一方で、それは核融合炉をつくる上で、必ずしも最も効率的な方法とは限りません。しかし、ITERには核融合炉を建設するだけでなく、各国が協力しながら技術力を高め、将来の核融合開発につなげるというもう一つの大きな目的があります。その意味でも、このような合意形成の積み重ねは欠かせないものなのだと感じました。
また、核融合開発の難しさや、スケジュールの不確実性についてもお話がありました。核融合の開発を進める民間企業とITERでは進め方に違いはあるものの、どちらも莫大な資金と長い年月を必要とします。そのような不確実性の中で研究開発を続けるためには、各国が長期的な方向性を共有し、継続して協力できる仕組みを築くこと、そして何より揺るぎない情熱を持ち続けることが重要だと思います。
Scene 20|研究者への道と、これからの進路を考える
その後は、ITERで物理のポストドクターをされている宗近様とお話しする機会をいただきました。これまで勉強していて曖昧だった部分を丁寧に説明していただいたほか、物理の勉強法や、これまで取り組まれてきた研究についても詳しく教えていただきました。また、ITERでのお仕事だけでなく、私がこれから進路を選択していく中で直面するであろう悩みや、研究を続ける上での困難についても相談することができ、とても参考になりました。
Scene 21|巨大プロジェクトを支える組立とスケジューリング
インターン8日目!
今朝は、Machine Assemblyのプロジェクトエンジニアの方から、機器のインストールについてお話を伺いました。準備工程から実際の組み立て、それに伴う技術、巨大プロジェクトならではのスケジュールの立て方、そして定期点検まで、全体像を幅広く説明していただきました。以前トカマクピットを見学した際に気になっていた点も質問してみると、ひとつひとつ丁寧に答えてくださり、実際の組み立てのステップや作業方法への理解がぐっと深まった気がします。
なかでも特に面白かったのは、スケジューリングの考え方です。スケジュール作成には4Dスケジューリングという仕組みが使われていて、CADモデルに時間の流れが連携されており、どの時間に誰がクレーンを使い、どんな作業が行われるのかが一目でわかるようになっています。まず年単位の大きな予定があり、そこから半年、3週間と徐々に細かくなっていき、最終的には1週間前に翌週の予定を決めるのだそうです。膨大な数の機関が関わっているため、国際情勢の変化や急なトラブル、追加の作業などに応じて、スケジュールは常に更新し続けなければなりません。現場の当日スケジュールまで柔軟性が求められる世界で最終的な当日の日程は毎朝確認を行います。
Scene 22|通勤バスから広がる国際交流
今日は、通勤バスでの時間についても少しご紹介したいと思います!ITER機構には通勤バスがあり、宿泊先の最寄りのバス停からITER機構まで、乗車時間は片道50分ほどです。そのバスのなかで、同じストップで降りるインド人の方、スケジューリングの仕事をしている韓国人の方、博士課程で来ている中国人のインターン生と仲良くなりました。きっかけはたまたま席が隣になったこと。ITERに来た経緯やこれまでの仕事、今の仕事のこと、実際の職場環境をどう感じているかなど、いろんな国の人に直接話を聞ける、とても貴重な機会になりました。大抵の方はすごくフレンドリーで、質問をすると本当に丁寧に答えてくれます。皆さんがITERで働くことをどう思っているのか、そういった生の声を聞けるのは、職場全体の雰囲気を知るうえでもすごく良いなと感じました。決まった面談の時間だけでなく、こうした自然な交流のなかで新しい友達を見つけてみるのも、インターン中の大きな楽しみの一つだと思います。

👆これはバス停までの道のりで撮った写真です。今泊まっている場所の近くは自然が豊かで綺麗な花がたくさん咲いていました。
Scene 23|VRで見えたトカマク内部の世界
インターン9日目!
今朝はITERのVR(Virtual Reality:仮想現実)ルームにお邪魔しました。ここではトカマク内部を原寸大・一人称視点で確認することができ、現在のトカマク内の状況を見ながらどうすれば次に設置する機器が干渉しないかを事前にシミュレーションできます。エンジニア同士がVR空間で試行錯誤しながら打ち合わせることもあるそうです。

👆私も実際に体験させてもらいましたが、慣れないうちは酔いやすいものの、その臨場感は圧巻でした。
トカマク内部は不純物を徹底的に排除する必要があり、入るためには防塵服への着替えが欠かせません。入退室だけでもかなりの手間で現場へ行くには移動時間がかかることに加え、精密な作業ゆえのリスクも伴います。だからこそITERでは、VRに加えて3Dアニメーションやミニチュアサンプルも駆使し、事前のシミュレーションを徹底することで、現場での作業をよりスムーズに行えるようにしているのだと実感しました。
また、3Dモデルでトカマクピット全体の説明もしてくださいました。ポートの構造やダイバータの配置など、図面だけでは一部分しか見えず、全体の中での位置関係がなかなか掴めません。ですが、3Dモデルを使うと細部まで拡大してあらゆる角度から確認できるので、各機器がどうつながり合っているのか、これまで曖昧だった部分がようやく腑に落ちました。以前から気になっていた、コイルが急冷された際の収縮にどのように対応するのかということに対しても底部の球状ベアリング(大きな構造物が少し動いたり縮んだりしたときに、その変化を無理なく受け止める装置)がどのように動きを吸収するのか、全体の一連の動きを説明してくださり、柔軟で精密な仕組みに驚きました。

👆部品ごとに色が違い、すごく分かりやすかったです。
Scene 24|会議と現場で支えられるITER
そして午後は、中本さんの会議に同席しました。何度かミーティングに同席したのですが、会議の頻度にいつも驚かされます。毎日あるものもあれば、毎週のもの、隔週のもの、さらに不定期で追加されるものもあり、大抵はそれぞれ30分から1時間もかかります。全体仕事をする上でコミュニケーションをすごく重視していて、常に情報をすり合わせながら前に進んでいるのだなと感じました。
その後は現場です。中本さんはTFコイルの技術責任者で、18個のコイルの状態確認から様々な試験を行う際の作業管理までを一手に担っています。現場までは歩いて10分から15分ほどで、フランスは晴天が多く、午後になるとかなり暑くなります。そんな中、中本さんは作業確認や打ち合わせのために毎日この道を何度も往復されています。実際にご一緒していると、一つの用事で行ったはずが、そのたびに何度も呼び止められていました。あれだけ仕事量が多いのに常に余裕を感じさせる中本さんの体力と熱意、現場を支えるプロフェッショナルな姿を見た気がします。

👆現場へ行く道で撮った写真です!ここでは色々な場所で参加極とITERの旗が飾られています。
Scene 25|国際プロジェクトを支える法務と知的財産
インターン最終日。
午前中は法務部の方とお話をする機会をいただきました。以前、調達について木村さんからお話を伺った際に、法務部のお仕事にも興味があるとお伝えしたところ、今回の面談をセッティングしてくださいました。
法務部の仕事は、ITER内の様々な法的手続き、職員の法的サポート(入国だけでなく詐欺対応などもするそうです)、フランスの規制対応、知的財産の管理、利害調整、職員全体に対する法律教育と相談など、書ききれないほど多岐にわたり、それを主に12人の職員でこなしているそうです。
私は特に知財管理に興味があったので、詳しく伺ったところ、決まったルールに沿って管理するというよりは、専門家と相談しながらその都度調整している、という印象を受けました。ITERで開発された成果は基本的に全ての参加極に共有されるのですが、ITERでは参加極以外にも様々な機関が関わっています。そのため共有予定の内容を確認したあと、必要に応じて関係する専門家に相談し、重要性や影響する範囲などを考えてどのような保護をするか判断するという流れです。そのためには、法務部であっても的確な判断を専門家とともに行うために核融合に関する知識は必要不可欠で、どこの部署にいても幅広い知識を持つことが大切になると改めて感じました。
また、知的財産における共有と保護は、反対の行為ではなく、同じ目的を支える二つの側面なのではないかと思うようになりました。知財の保護というと、技術を隠したり、他者の利用を制限したりすることを想像しがちです。しかし実際には、知財の所有者や利用範囲、共有相手を明確にすることで、関係者が安心して情報を提供できるようにする仕組みでもあります。多くの国や企業、研究機関が関わるITERでは、それぞれが技術、製造ノウハウ、設計、ソフトウェアなどを持ち寄っています。これらが誰に、どのような目的で使われるのかが不明確であれば、組織は情報提供に対して慎重になってしまいます。一方で、保護を厳しくしすぎた場合、あらゆる情報全てに対して受け取った側が「この条件でしか使えない」「許可を得た人以外には共有できない」といった制約を課され、許可を得る手続きが負担になり、返って技術の発展や連携に支障が出て、国際共同プロジェクトとしての意義も損なわれてしまいます。だからこそ知財管理とは、情報を閉じ込めることではなく、安全に共有するための範囲とルールを設計し、より良い協力関係を構築するためのものだと感じました。
Scene 26|お世話になった皆さんとのランチタイム
お昼には、お世話になった方々と一緒に食事をし、食後はテラスでゆっくりコーヒーを飲みながら会話をしました。フランスでの日常や皆さんの趣味の話など、皆さんの普段の暮らしが感じられるお話をたくさん聞かせていただき、本当に温かい方ばかりだと感じました。休暇の時には湖で泳いだり、バーベキューに行ったり、道で野菜が採れたりするそうです。今まで都市に住むことが多かったこともあり、お話を聞いていてフランスならではの、のどかな生活に心を動かされました。

Scene 27|同じ景色が違って見えた最終日
午後は、最後に中本様にアセンブリホールとトカマクピットを案内していただきました。先週も同じ場所を見学し、そのときは全体の規模や構造に着目していたのですが、今回は各部品の役割や設置方法、作業工程、そしてそこで働く方々一人ひとりの役割などに注目しました。
もともとITERに憧れて、本で写真だけを見ていた頃。まだ知識があまりない状態で、初めて現場に足を踏み入れたあの日。そして2週間のジョブシャドーイングを経て、実際に働く人たちと関わり、たくさんのお話を聞き、さまざまな経験をしたあとで、改めて実物を目にした今日。同じ場所に立っているのに、見える景色はまったく違っていました。以前よりずっと細かな部分にまで自然と目が向くようになり、その変化により自分の成長をはっきりと感じられた1日でした。
2週間のインターンを振り返って
今後、フュージョンエネルギーに関わるためには何を学んでいくべきなのか。ITERで働く方々からこれまでの経歴を伺えば、自分が進むべき道をより明確にできるのではないか。
そう考えて、今回のインターンに参加しました。
振り返ると、インターン中に特に考え続けていたのは、自分の将来の方向性、国際協力とは何か、仕事との向き合い方の三つだと思います。
1. 自分の将来の方向性
今回、さまざまな部署で働く方々から、現在の仕事に至るまでの経緯を伺いました。高校生の頃から核融合を志し、長年一つの専門を深めてきた方もいれば、異なる研究分野や職種に携わり、あとからITERに関わるようになった方もいました。
これまで私は、将来核融合に関わりたいのであれば、できるだけ早く核融合に直結する専門分野を選ばなければならないと思っていたのですが、ITERでは物理学者やエンジニアだけでなく、材料、化学、デザイン、ビジネス、法学、Engagement & Inclusion(従業員が組織に対して強い愛着や思い入れ(エンゲージメント)を持ち、多様な個性や意見が組織全体で受け入れられ活かされている状態(インクルージョン)を両立させる考え方)、マネジメントなど、本当に多様な知識や経験を持つ方々が力を合わせ、一つの目標に向かっていました。
まっすぐ一つの専門分野を追究してきた経験も、遠回りに見える道で得た知識や視点もこのプロジェクトの推進には、必要不可欠です。インターンを通して、自分が本当に面白いと思うことを大切にしながら、その学びを核融合や社会の課題の解決にどのようにつなげられるかを柔軟に考えてよいのだと気づきました。
大学では、核融合をより深く理解するために物理や数学の基礎をしっかりと身につけたいと考えています。同時に、今回関心を持った工学、材料、歴史、政策、国際関係などについても学び、自分の専門だけに閉じこもらず、異なる分野をつなげて考えられる人になりたいです。将来の職業を今すぐ一つに決めるのではなく、明確な目的を持ちながらも、好奇心を忘れずに学び続けることを大切にしたいと思います。
2. 国際協力とは何か
ITERに来る前、私は国際協力に対して、同じ目標を持った国々が力を合わせ、達成を目指すことだと比較的単純に捉えていました。しかし、実際の国際協力は、異なる立場、文化、技術、制度、利害関係を持つ人々が、時間をかけて調整をし一つ一つの結論をつくり上げる地道な過程なのだと学びました。
各国の意見を尊重しつつ、調整をし、合意をとって進めていくITERの方法は、最短ルートではないかもしれません。しかし、各国が技術や経験を持ち寄り、互いに学び、時には切磋琢磨しながら核融合開発全体の水準を高めていくこと自体に、ITERの大きな意義があると感じています。国際協力とは、単に違いをなくして一つになることではなく、違いがあることを前提に、信頼とルールと対話の仕組みをつくり、違いを持った人々が共通の目標に向かって進み続けることなのだと思います。
科学外交や科学技術政策を通じて核融合技術の推進、そしてその安全・平和利用にも携わるためには科学の知識だけでなく、歴史や文化、制度、各国の立場を理解し、異なる意見の背景まで考える力が必要です。今後はニュースや国際問題を見る際にも、表面的な出来事だけで判断せず、なぜその立場の違いが生まれたのか、その背景まで考える習慣を身につけることで、多角的に物事を捉えられる人になりたいです。
3. 仕事との向き合い方
今回のインターンでは、仕事内容だけでなく、ITERで働く方々がどのような姿勢で仕事に向き合っているのかを間近で見ることができました。
特に、2週間にわたって指導してくださった中本様からは、多くのことを学びました。現場では常に複数の仕事を抱えながらも、一つひとつの課題に落ち着いて対応されていました。また、異なる文化や立場を持つ方々と柔軟に調整しながらも、安全性や技術的な正確さなど、譲ることのできない点については、明確に自分の意見を伝えていました。この規模のプロジェクトを進めるために、目的を明確にした上で、課題を細分化し、周囲と丁寧に情報を共有すること、そして不確実な状況でも責任を持って一つずつ仕事を進めることが、大きな成果につながっているのだと学びました。

ほかの職員の方々からも、自分で課題を見つけて新しい方法を提案する姿勢や、不確実性の大きいプロジェクトに長年情熱を持って取り組み続ける姿を見ることができました。今後は私も、ただ与えられた勉強をこなすのではなく、「なぜ学ぶのか」「どのように活かしたいのか」という目的を持ち、自分で問いを立て、目標に向かって着実に一歩一歩進み続けられるように努力したいです。
今回得た知識だけでなく、ここで生まれた問いや興味を、これからの大学での学びと自分自身の行動につなげていきたいです。そしていつか、自分も科学と社会、国と国、人と人をつなぎ、新しい技術をより良い形で社会に届ける仕事に携わりたいと考えています。
出会いに恵まれた2週間

同じオフィスで過ごした二人のインターン生とは、空いた時間にコーヒーを飲みながら、大学生活やフランスでの暮らしについて何気ない話をすることもありました。また、パンやマドレーヌを分けてもらうなど、さまざまな場面で優しく接していただきました。一緒に過ごしたのはわずか2週間でしたが、何気ない会話や小さな心遣いの一つひとつが、温かい思い出になりました。短い期間の中で、このような友人ができたことを心から嬉しく思っています。
最後に、私の興味に合わせて多くの機会を用意し、温かく迎えてくださったITER、そしてJADAの皆様に心より感謝申し上げます。皆様のおかげで、知識だけでなく、これから自分がどのように学び、仕事をし、生きていきたいかを考える、かけがえのない2週間でした。
またいつか、成長した姿で皆様にお会いできることを心より願っています。