トロイダル磁場コイル2機の輸送開始
2021年8月、トロイダル磁場コイル2機を積載した船が日本を発ち、ITERサイトへの海上輸送を開始しました。TFコイルは、本体が縦17 m, 横9m, 重量320tであり、輸送フレームも含めると約400tの大型重量機器であるため、クレーンを備え付け、船自身で荷役が可能な在来船と呼ばれる貨物船を利用して、輸送を行っています。
そのため、工場からTFコイルを出荷し台船に積込み後、台船を在来船の横に付け、在来船のクレーンを用いてTFコイルを在来船に積込みました(図1) 。
図1 在来船のクレーンでTFコイルが吊り上げられ、台船に積み込まれる様子
この積込み時に使用する吊り具自身も100 kgを超える重量物であり(図2)、またTFコイルは1 mmオーダーの高精度の加工を行った精密機器であるため、荷役の際には緩衝材の設置によるTFコイルの保護や吊り具をTFコイルに当てないように慎重を期した作業を実施しました(図3)。
図2 貨物上部の4ヶ所にU字型の吊り金具を設置
図3 TFコイルや架台に傷がつかないよう作業箇所の周りに緩衝材を設置
在来船への積込み後、ストッパーの船底への溶接(図4)やワイヤーによる固縛(図5)を施し、船の揺れによってTFコイルが動かないようにしっかりと固定しました。
図4 TFコイルを固定するため、H鋼をストッパーとして溶接
図5 船底にH鋼を溶接後、ワイヤーで固定
コロナウィルス感染拡大によって生じた需給逼迫により、極端な海上運賃の高騰や適用できる在来船の選択肢が限られため、今回初めて2機のTFコイルを1隻の在来船に積込んでの輸送を実施しました。
まず横浜港で東芝エネルギーシステムズ製のTFコイル第3号機(TF10)を在来船に積込み後(図6) 、三菱重工製のTFコイル第6号機(TF02)を神戸港で積込み(図7) 、在来船はこれら2機を載せて日本を出発しました(図8) 。
図6 TFコイル第3号機(TF10)の在来船積み込みの様子
図7 TFコイル第6号機(TF02)の在来船積み込みの様子
図8 上段にTFコイル第6号機(TF02)、
下段にTFコイル第3号機(TF10)
日本を出発後、東南アジア、インド、スエズ運河、地中海を経由し、約19,000 kmの海上輸送を経て、フランスのマルセイユ港の西約50kmの位置にあるFos-sur-Mer港に在来船は到着します。一旦Fos-sur-Mer港にTFコイルを荷揚げし、自航式の台船を利用してITERサイトへ向かう陸送ルート入り口であるBerreに輸送した後、大型トレーラーを用いてITERサイトへ輸送を行います。
このように、TFコイルの輸送は海上輸送と陸上輸送が混在し、また数度の積替えがあり複数の輸送業者が作業に関係することから、輸送業者と密な連携を取り入念な輸送計画を立て、TFコイルの品質に影響を与えないように輸送作業を管理しています。現在輸送中のTFコイル2機は11月にITERサイトへ到着する予定です。