ボロメトリーとジャズに共通するものは? ITERで活躍する宗近洸洋さん
2026年1月 ITER機構広報インタビュー
東京工業大学 融合理工学系原子核工学コース 博士課程卒業
所属部署:ITER機構 科学部門(Science Division)
実験・プラズマ運転セクション(Experiments & Plasma Operation Section)
(2024年採用、任期2年)
※本記事は、ITER機構のイントラネットに掲載された記事を日本語版にしたものです(2026年1月)。
参加経緯と仕事内容
「これからは核融合しかない」宗近洸洋さんにとって、核融合への道はこの一言から始まりました。
その瞬間は、日本の中学校の理科の授業で訪れました。「ある日、先生が『これからは核融合しかない』と言われました」と宗近さんは振り返ります。「なぜか、その言葉が心に残りました。」それは決して消えることなく、今ではITERにしっかりと根を下ろしたキャリアを形作っています。
宗近さんは、ITERの科学部門(Science Division)の実験・プラズマ運転セクション(Experiments & Plasma Operation Section)でポスドク研究員として働いています。彼の研究は、ITERの重要な診断システムの一つを支えるための、シミュレーションを用いたプラズマ放射の評価に焦点を当てています。
「私は、ITERで計画されているボロメータ計測のために、合成信号を計算するワークフローの開発と適用を行っています」と説明します。彼の研究を導く2つの主要な問いは、「プラズマ対向部材への放射負荷を、診断装置でどの程度測定できるかの評価」と「ダイバータ領域での表面負荷に対する電荷交換中性粒子の寄与を、このシステムが情報として提供できるかの評価」です。
「『核融合』という言葉が、私の好奇心のすべてと突然つながった」
宗近さんの核融合への関心は、環境問題への広い関心とともに深まっていきました。「当時、日本では環境問題が広く議論されていました」と彼は言います。学生時代には酸性雨などのテーマで自由研究を行い、地域の環境分析センターを訪れたこともありました。「自然とエネルギー問題に興味を持つようになり、『核融合』という言葉が、私の好奇心のすべてとつながりました。」
ITER自体も決定的な魅力でした。「多くの研究機関が研究者中心で構成されているのに対し、ITERは建設、IT、法律、広報など、さまざまな分野の専門家を集めています」と彼は指摘します。「こうした多様なバックグラウンドを持つ人々と日常的に交流できるのは、他では得られない経験です。」
3次元で見る核融合
彼が誇りに感じている貢献したプロジェクトの一つは、ITERのボロメーターシステムに関する最近の研究です。「私は、ボロメーターシステムの完全な3次元シミュレーションを初めて実施しました」と語ります。「さらに、診断信号から総放射エネルギーを推定するための解析手法と必要なソフトウェアライブラリも開発しました。」
もう一つマイルストーンと言えば、仕事面だけではなく個人的にも重要なものでした。「国際会議で初めて英語で口頭発表も行ったことです」と宗近さんは振り返ります。「大勢の前で話すのはとても緊張しましたが、世界中の研究者と質疑応答や議論を交わす経験は、私を大きく成長させてくれました。」
なぜ重要なのか
宗近さんの研究は、ITERの最も重要な課題の一つであるプラズマディスラプションの対策を支えています。「プラズマディスラプションとは、超高温のプラズマが不安定になり崩壊する現象で、トカマクの壁に深刻な損傷を与える可能性があります」と説明します。
ITERではペレット粉砕入射(SPI)がその対策として用いられます。「ディスラプションの直前に、大型の低温ペレットを粉砕してプラズマに入射し、プラズマの熱エネルギーの大部分を光として放射させます」と彼は言います。「私の使命は、シミュレーションを通じて、SPIによってプラズマのエネルギーがどれだけ放射に変換されるかを推定することです。」
求められる基準は厳しいものです。「ITERでは、熱エネルギーの90%以上を放射させる必要があります」と宗近さんは付け加えます。「これが現実的に達成可能かどうかを評価することは、ITERの安全な運転を支える重要な役割です。」
「自由で柔軟な職場環境に深く感謝しています」
宗近さんにとって、ITERで働くことは最先端科学以上の意味を持ちます。「世界で最も先進的な研究拠点の一つで働けることは大きな魅力ですが、自由で柔軟な職場環境にも深く感謝しています」と語ります。
また、コミュニティの一体感も大切にしています。「部門の集まりや食事会は頻繁にあり、職場を楽しくリフレッシュできる時間になっています。」

発見とジャズ
広島出身の宗近さんは、東京工業大学の原子核工学コースで博士号を取得しました。核融合科学研究所のある教授との偶然の出会いが、ITERでのインターンシップにつながり、「大きな転機」となりました。その後、名古屋大学でポスドク研究を経て、再びITERに戻ってきました。
仕事以外では、エクス=アン=プロヴァンスを散策したり、知らない街を歩くことを楽しんでいます。音楽も欠かせない存在です。「自宅ではよく電子ピアノを弾きます」と話します。「大学時代はジャズ研に所属し、ジャズセッションにも頻繁に参加していました。」今でもフランスで地元のジャズセッションを探し、参加できるときは加わっています。

今後について
宗近さんは未来を見据えています。
「さまざまな選択や迷いがありましたが、常に変わらない信念があります」と語ります。「核融合に何らかの形で貢献したいという思いです。」
「どんな道を選んでも、その核心的な動機を見失わないようにしています。それが、私のキャリアにおけるすべての重要な決断の基盤でした。」
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