
NBTF用1MV絶縁変圧器がNBTFサイトに搬入
2025年6月11日から12日にかけて、イタリア・パドバにあるコンソルツィオRFX研究所(以下、「RFX研」)内のITER NB実機試験施設(NBTF)サイトに、1MV絶縁変圧器を搬入しました。
ITER中性粒子入射装置(NBI)および、これに先立ちイタリアに建設したNBTFでは、QSTが1MV高電圧電源のうち主要な高電圧機器を調達しています。
このうち1MV絶縁変圧器は、一次側入力である三相交流22kVを二次側出力6.6kVに降圧し、直流1メガボルト(1MV)の電位上にある機器に電力を供給する特殊な変圧器です。
このため、変圧器の一次・二次巻線間のバリア構造や油浸紙の厚さを工夫して直流1MVの絶縁を実現し、また、対地から直流1MVの高電位上に絶縁しながら二次側出力を引き出すために、小型のコンデンサブッシングとFRP円筒からなる高さ約16mの複合ブッシングを用いています。
NBTF用1MV高電圧電源機器は、現地据付後に1MV絶縁を確認するサイト受入試験を2019年までに完了し、2002年から欧州が調達していた低圧交流電源(インバータ電源)と組み合わせて1MV出力試験(統合試験)を開始しました。
しかし、2021年の試験時に予期せぬ放電が発生し、1MV絶縁変圧器が故障しました。その後の調査・分析の結果、1MV絶縁変圧器の設計自体には問題がないことが確認され、再製作することとなりました。
今回、その再製作した1MV絶縁変圧器をNBTFサイトに搬入しました。
搬入後、変圧器本体(6.2m(W)×4m(D)×3.6m(H)、約140トン)は直ちに基礎上に設置する予定でしたが、初期の据付工事時とは環境が大きく異なり、多くの電源機器や設備がすでに据付けられていたため、トレーラーが変圧器設置用の基礎近傍までアクセスできないという制限がありました。
そこで、RFX研および現地工事を請け負うSynecom社と協議を行い、初期据付時よりも大型の500トンクレーンを使用し、高さ約25mの高電圧ホール建屋の屋上を経由して基礎上に下ろすという大掛かりな作業手順を選択しました。
関係者間で十分な事前検討と調整を行った結果、計画どおり変圧器本体の設置作業を完了しました(図1)。1MV絶縁変圧器の二次側ブッシングの組立ておよび変圧器本体との接続作業は7月から開始し、10月ごろに完了する予定です。
図1 NBTFサイトに搬入された1MV絶縁変圧器の据付作業