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ITERダイバータ外側垂直ターゲット(OVT) プロトタイプ2号機製作完了

QSTは、ITER向けのダイバータ外側垂直ターゲット(以下、OVT)全58機の調達責任を負っている。今般、㈱日立製作所(以下,日立)が製作したOVTプロトタイプ(図1)が2025年3月に完成し、OVT高熱負荷試験体(図2)が2025年6月のITER機構の認証試験に合格しました。

図1 完成したITER外側垂直ターゲット(OVT)プロトタイプの外観

図2 OVT高熱負荷試験体

これにより日立のOVT実機製作がITER機構に認証されたこととなり、QSTは国内のOVT実機製作ラインを2ライン化し、製造体制を強化しました。ダイバータは、磁場閉じ込め方式の核融合炉において、核融合反応を安定的に持続させるために、炉心のプラズマ中に燃え残った燃料や核融合反応で生成されるヘリウムなどの不純物を排出する重要な役割を担っています。トカマク型装置の中で唯一プラズマを直接受け止めるための機器であり、プラズマからの熱負荷や粒子負荷などにさらされる厳しい環境下で使用されます。

QSTは、このような高熱負荷に耐久するための鍵となる技術として、熱負荷により割れることのないタングステンモノブロックや、高い熱伝導率を維持しつつ結晶粒の粗大化を抑えることで強度を確保した銅合金冷却管の開発を主導してきました。これらの材料をQST自ら材料メーカから調達して日立などのOVT製作メーカに支給しています。日立は、 OVTに要求される厳しい精度を達成するため、5軸機械加工の検証を繰り返し行い、高精度の加工及び組み立てを実現しました。また、OVTには35mmという厚肉のステンレス鋼が使用され、それらを溶接する技術が重要ですが、その溶接専用に最適化した自動溶接システムを開発しました。これは溶接トーチを取り付けたロボットアームと、溶接する対象物の位置をロボットアームの動きと同期させて制御する装置を組み合わせたものであり、これによって高品質かつ低コストでの溶接を実現しました。

 QSTと日立は、OVTプロトタイプ製作で得た技術や知見を活かして、今後もITER計画の推進に貢献するとともに、将来のフュージョンエネルギー実現に向けた技術開発にも協力していく方針です。