English
トップページ  >  一般の方へ  >  ITER Japan News  >  令和6年度プラズマ・核融合学会 学会賞 第29回技術進歩賞を受賞

トップ画像

令和6年度プラズマ・核融合学会 学会賞 第29回技術進歩賞を受賞

令和6年11月17日~20日に開催されたプラズマ・核融合学会 第41回年会において、那珂フュージョン科学技術研究所 ITERプロジェクト部 計測開発グループの河野 繁宏、石川 正男上席研究員、布谷 嘉彦グループリーダー他7名が、「自己崩壊αパルスを利用した核分裂検出器の新たな健全性確認方法の開発」により、令和6年度プラズマ・核融合学会 学会賞 第29回技術進歩賞を受賞しました。受賞記念講演と授賞式は、11月18日に行われました。

図1 河野繁宏による受賞記念講演の様子

核分裂検出器(フィッションチャンバー)は、中性子束を測定する検出器であり、一般的には中性子源(例:カリフォルニウム252)を用いて健全性を確認します。しかし、ITERで使用するマイクロフィッションチャンバーでは、これらの中性子源を利用することができず、代替手段が求められていました。

受賞者らは、従来ノイズとして扱われていた検出器内部の電極上のウランの自己崩壊αパルスに着目し、この自己崩壊αパルスを利用することで、検出器の健全性を確認する新しい手法を提案しました。さらに、LHD(大型ヘリカル装置)での実験により、自己崩壊αパルスをノイズから分離して検出することに成功し、核分裂検出器の新たな可能性を示しました。この研究成果は、核融合分野だけでなく、原子炉や原子力研究施設など広範な分野への波及効果も期待されます(河野他、Plasma and Fusion Research Vol.19,1405015(2024))。
原子力施設等で一般的に使用される核分裂検出器に関する、独自性のある着眼点と実証データの提示が評価され、技術進歩賞に値すると認められたものです。

受賞者:河野繁宏(QST)、石川正男(QST)、隅田脩平(QST)、小渕隆(NIFS)、小川国大(NIFS)、磯部光孝(NIFS)、伊藤大二郎(東芝エネルギーシステムズ)、矢澤博之(東芝エネルギーシステムズ)、黒崎将史(東芝エネルギーシステムズ)、布谷嘉彦(QST)

図2 技術進歩賞授賞式(左から プラズマ・核融合学会 安藤晃会長、隅田修平研究員、矢澤博之スペシャリスト、伊藤大二郎スペシャリスト、河野繁宏、小川国大准教授、黒崎将史マネジャー、磯部光孝教授)

受賞者コメント(河野繁宏)
今回の発表ではウランのα崩壊による電離パルスを測定することで、核分裂検出器の健全性を検証することが出来ることを報告しました。 従来、核分裂検出器のαパルス信号はノイズに埋もれて測定できないと認識されていましたが、信号波高が従来考えられていたより高く、検出器の健全性確認に利用できることを実測と計算で確認しました。本方法の良いところは、外部中性子源を使用する必要がないため、「合理的に達成可能な限り被ばく量を減らす」と言うALARAの指針に適合することです。
今後は、ITERマイクロフィッションチェンバーシステムの実機製作を進め、核融合炉に於ける中性子計測システム技術の向上に努力いたします。

【参考】
プラズマ・核融合学会|令和6年度 学会賞受賞者
第41回年会懇親会にて表彰式を開催しました [2024/11/18]