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令和5年度量研理事長表彰 創意工夫功労賞を受賞

 令和5年7月13日、量研理事長表彰が行われ、量子エネルギー部門研究企画部ITER・BA業務推進グループの梶谷秀樹主幹研究員を代表とするITER TFコイル構造物開発チーム(梶谷秀樹、井口将秀、櫻井武尊、中本美緒、諏訪友音、高野克敏、堤史明、泊瀬川晋、中平昌隆、礒野高明、小泉徳潔)が「ITER TFコイル構造物の溶接変形制御法の考案」により、令和5年度量研理事長表彰の創意工夫功労賞特賞(図1)を受賞しました。

ダイバータの役割と調達担当

図1 量研理事長表彰 創意工夫功労賞を受賞した梶谷秀樹主幹研究員(ITER TFコイル構造物開発チーム代表)

核融合実験炉ITERのトロイダル磁場(TF)コイル用超大型構造物の製作では、長さ16.5mと非常に大きいにもかかわらず、数ミリオーダーの厳しい寸法精度が要求されています。構造物は多数の部品を溶接して製作しますが、使用される極低温構造材料は溶接変形が大きいという特性があり、溶接変形を抑制する手法の確立が必要でした。通常、溶接変形の抑制には、反転して両面を均等に溶接して変形を相殺する手法が採用されます。しかしTFコイル構造物は巨大なため頻繁に反転することができず、また断面形状が非対称のコの字型であり溶接変形の高精度制御が困難でした。

そこで、精度の高い3次元レーザー寸法計測を導入し、溶接中にリアルタイムで溶接変形量を精度良く測定する方法を考案するとともに、溶接変形を抑制するために構造物に与える予荷重を、溶接中に測定した変形量から最適な荷重量に補正する手法を開発しました(図2)。

これを現場で適用し、溶接中に迅速にフィードバックすることで、巨大な構造物を反転しなくても、溶接変形を制御可能とし、溶接変形を2-3㎜以下に低減することに成功しました。これにより、溶接後の仕上げ加工量を大幅に削減できたことから、国際約束で合意したスケジュールを守り、TFコイルを完成させることに貢献しました。

外側垂直ターゲットの主要材料について

図2 片側溶接・溶接変形制御システム

成果は、欧州が製作するTFコイルの構造物を日欧で合意したスケジュールで製作することにも貢献し、欧州国内機関からも高く評価されました。今後は、開発した技術を核融合原型炉に適用することを考えています。本成果は、10mを超えるような宇宙・海洋分野の大型構造物を高精度に製作する技術にも適用可能で、余肉量の削減と加工時間の短縮による低コスト化に貢献するものです。