ITER機構 技術調整会合が初開催
ITER機構の主催の下、初めて、技術調整会合(Technical Coordination Meeting, TCM)がITER機構本部において対面及びリモート参加のハイブリッド形式で開催されました(図1)。
図1 4日間にわたって開催された技術調整会合(写真:ITER機構提供)
ITER機構及び参加7極から約300人の参加(リモート参加含む)を得て、2023年4月11日~14日の4日間にわたり、ITER機構のベクレ工学部門長を議長として調達・建設の進捗、システム横断的課題、新ベースライン策定に関する課題が議論されました。会合では冒頭のバラバスキ機構長による所信表明の後、2023年3月に着任した鎌田新副機構長から、ITERはOne Step to DEMOとしてDEMO炉(核融合炉として実際に発電が出来るかを試すために作られたのが「原型炉」。その名を「DEMO(デモ)」と言います。)に必要な技術の習得を目標とすべきことが強調されました。
今回の会合で特に議論が白熱した議題の一つは、新ベースライン検討の一環として第一壁表面保護材(アーマ材)として従来採用してきたベリリウム(Be)をタングステン(W)に変更する案です。Beは低原子番号材であり、プラズマにBeが不純物として混入したときにプラズマ温度を下げてしまう(放射冷却)効果が低いことから、欧州のJET(Joint European Torus 欧州トーラス共同研究施設、イギリスにあるトカマク型核融合実験装置)で採用されて高いプラズマ性能の実現に貢献してきました。
一方、Beはその強い毒性により取扱いには放射性同位元素に準ずる厳格な規制が適用され、遠隔保守機器やホットセル施設等に特段の高い要求が課せられています。ITER機構側から工学的な視点からBeとWの比較が示され、安全性、許認可手続き、組立て作業、廃棄物処理及び遠隔保守に大きな利点があると共に、各国で設計を進めているDEMO炉ではBe使用が想定されていないこと、W使用による放射冷却の増大を加熱システムの増力及び第一壁表面のボロン(B)コーティングで補えることが示されました。
このほか、安全工学、計装制御、超伝導コイルの核発熱の増大等に関する議論がありました。また、既存装置からの教訓を紹介するとしてHL-2M(中国の核融合実験装置)、JT-60SA(量研 那珂研究所にある核融合実験装置)、KSTAR(韓国の核融合実験装置)、WEST(欧州の核融合実験装置)のからそれぞれ講演がありました。なおTCMは今後、年2回の頻度で開催し、技術課題や懸案事項等に関する議論を行う見通しとなっています。