核融合炉用3周波数ジャイロトロンを世界で初めて開発
量研は、ITERと同じ周波数である170ギガヘルツに加えて、137ギガヘルツと104ギガヘルツの3つの周波数で高出力連続動作が可能な3周波数ジャイロトロンを開発しました。 ジャイロトロンの空胴共振器で励起されるマイクロ波は、発振モード(TEモード)と呼ばれる複雑な電界分布を持つが、モードコンバータと呼ばれるジャイロトロン内機器を通過させることで指向性の高いガウスビームに変換され、金属ミラーを介してジャイロトロン出力窓から放射することができます。
空胴共振器では、動作条件により様々な発振モード(周波数)のマイクロを励起させることが可能ですが、発振モード毎に固有の 放射角度を持つため、単一周波数での設計が基本となります。
しかしながら、量研はこれまでにモードコンバータからの放射角度がほぼ一致する発振モードの探索に成功しており、2つの周波数で長パルス発振が可能なジャイロトロンの開発に成功しています。しかし、3周波数となると周波数が大きく離れており、ビーム広がりを抑えることが難しく、マイクロ波ビームが伝送中に散逸して高出力で連続動作させることが困難でした。この問題を解決するために、モードコンバータの出力後にマイクロ波ビームを整形・伝搬させる役割を持つジャイロトロン内部と、ジャイロトロンと導波管伝送路を仲介する整合器内部の計6枚の金属ミラーに対して、これまで別々に最適化をしてきたモードコンバータとこれら6枚の金属ミラーを一括で最適化させる設計手法を導入し、その設計結果をもとに製作を行いました。
実験の結果、170ギガヘルツ、137ギガヘルツ、104ギガヘルツという大きく異なる周波数のマイクロ波ビームが導波管中央部へと伝搬され、導波管先に設置したターゲットの全く同じ位置に、ほぼ同じビームサイズで到達していることが確認されました(図1)。
図1 ジャイロトロン、整合器、導波管と順に伝送された3つの周波数のマイク波ビームが同一方向に伝搬している様子。
ジャイロトロン内部及び整合器内部のマイクロ波ビームの散逸は大幅に減少し、170ギガヘルツと137ギガヘルツにて1メガワット、104ギガヘルツにて0.9メガワットの連続動作(300秒間)を達成し、世界で初めて単一ジャイロトロンによる3周波数の高出力連続動作を実証しました。
那珂研プレスリリース:核融合炉用3周波数ジャイロトロンを世界で初めて開発 -核融合原型炉の実現に貢献-