実機ジャイロトロン最初の2機がITER機構に到着
量研のITERジャイロトロン1号機と2号機が、2022年2月にITER建設サイト内の空調管理倉庫に到着しました。2機のジャイロトロンは、2016年12月と2017年2月に製作が完了し、量研内の高周波試験装置にて調整運転が行われた後、量研とITER機構間で合意した試験項目を実施する性能確認試験が行われました。
性能確認試験では、出力1MW/電力効率50%/連続運転300秒の実証と、高繰り返し(Duty比25%の20ショット)・高信頼度(成功率90%以上)試験、1kHz~5kHzでのON-OFF出力変調動作などの試験項目を全て満足して、2019年12月に2機の性能確認試験を完了しました。その後は、量研内で保管されてきましたが、ITER建設サイトにおける高周波建屋の完成にともない、2022年1月に量研を旅立ちました(図1)。
図1 量研を出発した2機のジャイロトロンがITER機構に到着
ジャイロトロンは、ITERにおける加熱・電流駆動装置のひとつである電子サイクロトロン共鳴加熱・電流駆動装置の心臓部となる高周波発振源(ミリ波源)です。ジャイロトロンが発生する大電力のミリ波は、炉心プラズマの着火・初期加熱に始まり、局所的な電流分布制御により鋸歯状振動や新古典テアリングモード*1)の不安定性を抑制し、プラズマを安定な状態に維持します。ITERジャイロトロンは、日本が8機、ロシアが8機、欧州が6機、インドが2機を調達することとなっており、日本は全8機の製作と5機の性能確認試験を既に完了しています(図2)。
図2 製作を完了した8機のジャイロトロン
今回輸送されたジャイロトロンは、ファーストプラズマを生成するという重要な役目を担います。ジャイロトロンのシステム構成に必要なジャイロトロン架台や冷却水マニホールド、加速電源は全8機分の輸送が完了しており、超伝導マグネットやジャイロトロンと伝送系を接続する準光学整合器も4機分が輸送されました。
2022年度内には高周波建屋への据付け作業が開始される計画となっており、ジャイロトロンシステム構築後には欧州が調達した高電圧電源と組み合わせた統合試験を行う予定です。
*1)新古典テアリングモード(Neoclassical Tearing Mode)
衝突周波数の下がった高温プラズマにおいては、新古典理論に基づき圧力勾配に起因した自発電流が流れる。しかし磁気島においては高温部と低温部が磁力線により短絡され、圧力分布の平坦化が起こる。この結果、自発電流が減少し、磁気島をさらに成長させるMHD不安定性が生じる。この一連のプラズマ挙動パターンを新古典テアリングモードという。