令和3年度日本原子力学会北関東支部リモート若手研究者・技術者発表会において最優秀発表賞を受賞
令和4年1月26日にオンライン開催された令和3年度日本原子力学会北関東支部リモート若手研究者・技術者発表会において牛木知彦研究員が最優秀発表賞を受賞いたしました。授賞式はオンラインで行われました(図1)。
図1 最優秀発表賞を受賞した牛木知彦研究員
「ITERダイバータ赤外サーモグラフィのレンズ材料のガンマ線及び中性子照射による中赤外光学特性の影響評価」で受賞した牛木知彦研究員は、今回の受賞にあたり以下のように述べています。
今回の発表では、ITER ダイバータ赤外サーモグラフィ装置の観測波長領域(1.5-4.5μm)の色収差の補正で使用することを想定している3種類のレンズ材料(蛍石、セレン化亜鉛、シリコン)の内、2種類のレンズ材料(蛍石、セレン化亜鉛)IRTh波長領域の放射線耐性の調査を行いました。
蛍石のIRTh波長領域の放射線耐性の調査では、蛍石の不純物の含有に相関を持つ真空紫外透過率の吸収端の波長を照射前に事前に測定することで、非破壊で一部の粗悪な放射線耐性を持つ材料を選別する手法を考案し、非破壊で粗悪な材料を回避できる可能性を初めて示しました。
セレン化亜鉛の放射線耐性の調査では、ガンマ線照射においては5mm厚の硝材サンプルに対し3μm付近で数%程度の透過率の劣化が生じることが明らかになりました。走査電子顕微鏡による表面観察からは照射後のサンプル表面にはマイクロスケールの特徴的な(針状)構造が成長していることがわかり(図2)、透過率劣化との因果関係が疑われましたが、X線光電子分光(XPS)法による分析から、3μm付近に現れた特徴的な吸収はガンマ線照射により酸化が促進された結果表面で生成された水酸化物が原因であると最終的に特定しました。
サンプル深さ方向の水酸化物及び酸素の存在量を、評価から、水酸化物はサンプル表面のみに存在していることが明らかとなり、このことからガンマ線照射によるZnSeの透過率劣化は硝材の厚みではなく、使用するレンズの枚数(光学面の数)のみに依存することが分かりました。よって、ZnSeレンズのITER ダイバータ赤外サーモグラフィ装置実機使用の目途が立ちました。
図2 ガンマ線照射後のZnSeサンプル表面の走査電子顕微鏡画像
今後ITER環境とは異なる、より高い放射線環境、湿潤環境下、宇宙環境下等で本材料を使用する場合での使用可能性を判断する上で、非常に重要な知見を得ました。
本受賞を励みに、これからも装置開発になお一層注力し、日本独自のアイディアと最先端の技術が合わさったオリジナリティあふれる計測装置を実現するべく日々精進したいと思います。