2020年度 日本機械学会標準事業表彰 国際功績賞を受賞
令和3年3月23日、ITERプロジェクト部の中嶋秀夫専門業務員が、「核融合設備規格超伝導マグネット構造規格の原案・改訂案の策定への貢献」で、基準・規格類に関する国際交流や国際的地位の向上、もしくは我が国の標準化事業への発展に顕著な貢献に対して贈与される「日本機械学会標準事業表彰 国際功績賞」を受賞しました。
新型コロナウイルス感染拡大防止の都合上、表彰式及び懇親会は開催されませんでしたが、表彰状と表彰楯が授与されました。
日本機械学会標準事業表彰 国際功績賞を受賞した中嶋専門業務員
授与された表彰楯
ITERを日本に建設するためには、ITERで使用する機器の構造健全性を担保しつつ、ITERの合理的な建設を実現する核融合設備規格が必要であることから、2002年7月に日本機械学会 発電設備規格委員会の下に核融合専門委員会が設置され、安全機器である真空容器の規格の策定が開始されました。
しかし、2005年にフランスにサイトが決定するとともに、日本がトロイダル磁場コイル(TFコイル)の構造物を全量製作することになったため、真空容器の規格に代わり、今回の授賞対象である「核融合設備規格超伝導マグネット構造規格」の策定が開始されました。
この規格は2008年に初版が発行され、その後、2013年、及び2017年に改訂版が発行されています。今回の受賞は受賞者の15年に渡る規格原案・改訂案の策定への貢献が評価されたものです。
原案・改訂案の策定に貢献した核融合設備規格超伝導マグネット構造規格
超伝導マグネット構造規格は、一般要求、材料、設計、製作、非破壊試験、耐圧・漏れ試験等に関する規定で構成されていますが、受賞者は、長年にわたる極低温構造材料の開発・評価に関する研究の実績を生かし、超伝導コイルが運転される液体ヘリウム温度(4K)までの設計強度を規定した世界に類を見ない材料規定策定に貢献しました。
これにより、高価な液体ヘリウムを使用した4Kでの試験の実施を不要とし、製作の合理化を実現しています。また、この規格には、国際的適用を目指して英訳版が附属されており、ITERのTFコイルの容器材料に、この規格の材料規定が適用され、 ITERのTFコイル実現の一助となりました。
さらに、受賞者は液体ヘリウム中での構造材料の引張試験、弾塑性破壊靭性試験、及び疲労試験の試験方法に関する日本工業規格(JIS)の原案策定にも貢献しました。特に引張試験方法は、米国標準局との協力で原案を策定しており、この原案は日本ではJIS規格、米国ではASTM規格へと発展しました。また、ITERでの超伝導マグネット調達活動を通じて、超伝導マグネット規格を国際的に周知させたことも今回の受賞では評価されました。
原案の策定に貢献した日本工業規格
日本機械学会での規格策定活動の最終目標は、核融合設備規格の構築であり、超伝導マグネットの規格はその第一歩に過ぎません。規格策定活動へ今後も貢献することで、日本での原型炉の建設、さらには、核融合工学技術の体系化、普遍化を目指します。
【ご参考】日本機械学会 | 2020年度日本機械学会賞ほか受賞者が決定しました!