第34回ITER理事会が開催
2024年6月19-20日に開催された第34回理事会(図1)において、ピエトロ・バラバスキITER機構長は、ITER機構(IO)及び国内機関(DA)がITER計画を成功に導き、よりクリーンで信頼性が高く、豊富なエネルギー源を普及させる世界的な取組の中で中心的な地位を強化するために行ってきた努力を反映し、ITER計画の進捗状況について報告しました。
理事会は、ITERが追求する核融合運転は、世界的な核融合研究開発及びITER加盟各極の国家核融合プログラムにとって、引き続き強い意義があることを再確認しました。
図1 第34回ITER理事会(写真提供:ITER機構)
ITER 理事会では、以下についての報告・議論が行われました。
- ベースラインの更新:2022年、バラバスキ機構長は、各国内機関の支援と理事会の監督の下、計画の改革プログラムを開始しました。改革には、プロジェクト管理の合理化、品質管理への一層の注目、報告の強化などが含まれました。さらに、新型コロナ感染症のパンデミックや多くの機器が世界初であることに伴う技術的課題に起因する遅延のため、ベースラインを更新する必要性にも対処しました。今回の会合で、ITER機構は、国内機関の支援を得て、理事会で検討するためにベースラインの更新案を提出しました。
提案された新しいベースラインは、実質的な研究運転をできるだけ早く開始することを優先しています。これは、トカマクの組立段階を統合し、組立前試験を強化し、装置の組立及び試験運転のリスクを低減することによって達成されます。この組立段階を通じ、ITER計画は、世界的な核融合イノベーションプログラムに関連して必須となる技術的マイルストーンを通じて継続的に進展させます。提案されたベースラインは、この新しいアプローチによるコスト増とスケジュールへの影響を含め、更に評価・検証され、その勧告は、ITER理事会で検討されるために共有される予定です。
- 計画の進捗:理事会は、製造、組立、据付の進捗状況に加え、主要機器である真空容器(VV)と熱遮へい板(TS)の修理の進展に留意しました。7月1日には、長年ITER機器の中で最も技術的に難しいとされてきたトロイダル磁場(TF)コイルの製造が全て完了したことを祝う式典が予定されています。また、全てのポロイダル磁場(PF)コイルの製造も完了しました。これらは、ITER計画が組立段階で達成する重要なマイルストーンの一例です。最初の3つの中心ソレノイド・モジュールを積み上げ、位置合わせを行っている一方で、4つ目の中心ソレノイド・モジュールがITER に到着しました。トカマクピットではマグネットフィーダーの設置が進行中です。複数の支援システムが試運転を完了するか、試運転の過程にあります。
- 民間部門への関与:民間の核融合イニシアチブとの関与を求める、2023 年11 月のITER 理事会の要請を受けて、5月にワークショップが開催されました。このワークショップには、世界の核融合スタートアップ、サプライヤー企業、研究機関、国立研究所、大学、NGO、政府機関から積極的な参加がありました。300人を超える出席者は、民間部門の核融合研究開発を補完するものとして、ITERのミッションと研究活動の重要性を再確認しました。理事会は民間部門への関与を歓迎し、加盟極に対して、自国の機関(例.政府機関、研究機関、民間核融合関連企業)が関連する世界的な核融合への取組を引き続き支援することを奨励するよう要請しました。
- 新しい幹部チームのメンバー:理事会は、機構長の推薦を踏まえ、デリア・ロックリッジ氏をエンジニアリング・サービス部門長に任命しました。理事会はまた、機構長がエンジニアリング・サービス部門の組織を改善し、2025 年の完全マトリックス化組織の発足に備えるため、国内機関の支援を受けながら継続的に取り組んでいることにも留意しました。
- ITER加盟極の支持:理事会加盟各極は、ITERのミッションの価値を改めて強調し、ITERの成功を促進するための解決策を見出すために協力することを決議しました。また、多様性・公平性・包摂性の原則を、採用活動、職場文化、次世代核融合人材の育成に統合するというITER のコミットメントへの支持も表明しました。理事会は、ITER 計画が直面する継続的な課題に留意し、全ての加盟極が計画の成功を支援するため、現物及び現金貢献を継続的に履行していることに感謝の意を表明しました。