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プラズマ・核融合学会2020年度若手学会発表賞を受賞


■ プラズマ・核融合学会2020年度若手学会発表賞を受賞

  令和2年12月4日にオンライン開催されたプラズマ・核融合学会 第37回年会において、量研 核融合エネルギー部門 那珂核融合研究所 ITERプロジェクト部 計測開発グループの牛木知彦研究員と、ITERプロジェクト部 プラズマ対向機器開発グループの福田誠主任研究員の2名がプラズマ・核融合学会2020年度若手学会発表賞を受賞いたしました。授賞式は、プラズマ・核融合学会 第37回年会にてオンラインで行われました(図1)。

「2重2波長法:ITERダイバータ赤外サーモグラフィのための超広温度範囲サーモグラフィの新手法」で受賞した牛木知彦研究員は、今回の受賞にあたり以下のように述べています。

 今回の発表では200℃から3600℃にわたる超広範囲のダイバータ温度をITERダイバータ赤外サーモグラフィ装置によって高精度で計測するための新手法(2重2波長法)の概要報告を行いました。

 今回開発した新手法では、従来の2波長法においてITERの計測要求である10%の温度計測精度を実現するため4%程度しか許容されなかった2波長法の輝度比の誤差を、全計測温度領域にわたり10%以上まで拡張することに成功し、これによりこれまで困難だったITERダイバータ赤外サーモグラフィの温度計測要求を満たす見込みを得ました。

 本受賞を励みに、これからは装置開発になお一層注力し、日本独自のアイディアと最先端の技術が合わさったオリジナリティあふれる計測装置を実現するべく日々精進したいと思います。

 
「ITERダイバータ外側垂直タングステンの量産化に向けた性能評価」で受賞した福田誠主任研究員は、今回の受賞にあたり以下のように述べています。

 今回の受賞は、フランスのサン・ポール・レ・デュランスで建設が進められているITERの炉内機器の一つである、ダイバータ外側垂直ターゲットに使用するタングステンの量産化に向けた研究開発の成果が評価されたものです。

ITERダイバータ外側垂直ターゲットには、プラズマ対向材料として約20万個のタングステンブロックを使用します(図2)が、このような大量のタングステンブロックの生産が行われたことは世界的にも例がありません。また、ダイバータはITERの炉内機器の中で最も高い熱負荷に晒されるため、タングステンブロックには高い熱負荷に対する優れた耐久性能が求められます。これまでの研究開発によって、ITERで想定される熱負荷に耐えるダイバータの製作技術を確立しました。その一方で、タングステンブロックを大量生産した際に、材料の品質や高い熱負荷への耐久性能がどの程度変動するのかが未知であるという課題がありました。

本研究では上記課題を解決するために、タングステンブロック約4万個に相当する材料データを取得し、材料特性に一定のばらつきが生じていることを明らかにしました。さらに、タングステンブロックに対する繰返し高熱負荷試験を実施し、タングステンブロックの大量生産時に想定される材料特性の変動は、熱負荷への耐久性能に影響せず、許容可能であることを明らかにしました。

本研究によって、ITERダイバータ外側垂直ターゲット用として、安定した性能を発揮するタングステンブロックの量産化の目途を得ました。その一方で、タングステンブロックを量産した際に想定される材料特性のばらつきの高い精度での推定や、繰返し高熱負荷によるタングステンブロックの変形・損傷挙動については未だ十分な知見が得られておらず、未解決の課題があります。また、現在のITERダイバータ用タングステンの材料仕様は市販のタングステン板材用の規格を基にして定められていますが、その仕様を「核融合炉ダイバータ用タングステン」の材料仕様として最適な内容に見直す必要があります。今後は、これらの未解決の課題を解決すべく研究を継続すると共に、ITERダイバータ外側垂直ターゲット実機の製作に向けた研究開発を着実に進めます。
 



図1 オンライン授賞式の様子(上が牛木知彦研究員、下が福田誠研究員)



図2 ITERダイバータ外側垂直ターゲットに使用する
タングステンブロックの数量