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令和2年度触媒工業協会技術賞を受賞

■ 令和2年度触媒工業協会技術賞を受賞

 令和2年10月14日、ブランケット研究開発部トリチウム工学研究グループの岩井保則グループリーダーが、田中貴金属工業株式会社との共同研究による「疎水性貴金属触媒の開発」において、一般社団法人触媒工業協会より「令和2年度触媒工業協会技術賞」を受賞しました。オンライン開催された「令和2年度 触媒工業協会 表彰式」においては、表彰状を授与されるとともに、量研の岩井保則グループリーダーが共同受賞者の田中貴金属工業株式会社の久保仁志氏とともに受賞記念講演を行いました(図1、図2)。

 技術賞を受賞した疎水性貴金属触媒(図3)は、南フランスのサン・ポール・レ・デュランスで建設が進められているITERなどの核融合研究施設において燃料として使用される放射性物質トリチウム(三重水素)の閉じ込め技術として、トリチウムの室温酸化を実現させるための触媒として開発したものです(図4)。

 開発した触媒は「疎水性」であることが特徴です。従来の触媒は、処理ガス中に含まれている水分や反応により生じる水蒸気が膜となり触媒表面を覆って触媒反応を阻害してしまうという欠点がありました。よって従来触媒では水蒸気膜の被覆防止のための触媒の加熱が必要でした。疎水性の触媒はプラスチックを担体とした例がありましたが、酸化反応により生じる熱による焼損リスクがあり、水素酸化用途には適応できませんでした。

 量研と田中貴金属工業(株)は、熱や放射線に強い無機物質に化学的に水の吸着を防止する疎水基(水となじみにくい物質)を付与することにより、担体表面を均一に疎水化し、耐熱性と疎水性の両特性をもたせた新たな触媒製造法を完成させました。本技術は国内外で特許を取得しており、疎水性貴金属触媒は田中貴金属工業株式会社より販売されています。一般社団法人触媒工業協会は健全な触媒工業の発展を促進する目的で設立された日本を代表する触媒工業の業界団体です。今回の受賞は疎水性貴金属触媒の開発につき、商用化している優れた触媒関連の先進技術として触媒工業協会から表彰いただいたものです。

当触媒の疎水性という特徴により、水素の持続的な室温酸化が可能となるため、災害等による水素取扱施設の停電事象発生時においても施設内に漏洩した水素の酸化による除去が行えることから、水素爆発災害などを未然に防ぐための安全設備に適用が可能と考えています。水素爆発災害を防ぐ核融合発の革新技術として水素エネルギー社会におけるインフラ構築での活用を目指しています。


図1 受賞記念講演を行う受賞者


図2 授与された表彰状


図3 (左)疎水性貴金属触媒(商品名TKK-H1-P 田中貴金属工業株式会社)
写真の触媒は粒形3mm。
(右)本技術は粒形触媒だけではなくメタルハニカム触媒の疎水化も可能。
写真は疎水化したメタルハニカム触媒が水を弾き浮かんでいる様子




図4 ITER異常時トリチウム除去システムの主要機器構成。
雰囲気ガスに含まれるトリチウムは触媒塔で酸化して
生じたトリチウム水蒸気をスクラバ塔で回収する。
本触媒はトリチウムの室温酸化用触媒として開発された。