クラスタ活動報告

サン・ポール・レ・デュランスの風 < ホーム

サン・ポール・レ・デュランスの風バックナンバーはこちら

2回目 平井 武志さん(ITER機構 タングステン・ダイバータセクション)

みなさん、こんにちは。ITER機構で働いている日本人の方々を紹介する「サンポール・デュランの風」、今回はその第2回で、平井武志(ひらいたけし)さんをインタビューします。1回目にご出演いただいた米川出さんからのご紹介です。

(2013/12/17、南、中西)


本日は、よろしくお願いします。プロフィールを送っていただき、ありがとうございました。
九州大学で学位をとられたのですね。

はい、九州大学の吉田直亮先生のところで、材料とプラズマ粒子の相互作用に関して。今携わっているダイバータ材料とも関連が深い分野です。

その後、ドイツに移られたとか。どういった経緯だったのでしょうか?

最初はドイツのユーリッヒ研究センターにTEXTORで2年弱、プラズマ表面相互作用の実験をしていました。その後、センター内でテクノロジーに近い研究所に移籍し、高熱流速負荷実験に携わりながら、物理とテクノロジーの両方に関わるところで研究していました。2005年に欧州ではJETでのITER-Like wall プロジェクトでタングステン・ダイバータをいれるにあたり、ユーリッヒがそのタングステンダイバータの設計担当になり、ユーリッヒ側のコーディネータに抜擢され、デザイン活動を指揮しました。イギリスにあるJETに常駐ではなく、ドイツを拠点にして、年に4、5回程度、進捗報告、プロジェクトの会合でイギリス・ドイツ間を往き来するという状況でした。日帰りもあったりして。

バルクタングステンのダイバータ設計がメインでしたが、その他、ユーリッヒにあった熱負荷装置を使って、各種テストも担当していました。ITER-Like wall プロジェクトの主なR&Dは深く関わっていました。ドイツ側は10~20名ぐらいのチームで設計を担当していました。ユーリッヒの研究所はかなり国際的なところなので、ドイツ人以外にもオランダ、ベルギー、オーストリア、ポーランド、ロシア、スウェーデンなど、様々な人たちが参加していました。欧州の機関ですので、ヨーロッパ中心のメンバーではありましたが。

その次に、JETの仕事からITERに移られた?

はい、そうです。ITER自体が研究所というよりは事業所なので、調達の責任者となって、異なるものの見方で仕事をすることになり、最初は少しギャップがありました。おそらく核融合科学研究所とかでも実験装置を作る時はそうだと思いますが、いかにしていいものをスケジュール通りにいれるかを注視していくのが仕事の責任となります。各極のDA(国内機関)が製作メーカとの間で重要な役割を果たしており、ITERとしてはDAと議論をしながら間接的に産業界ともやり取りすることになります。

また、ITER機構ではコンポーネントごとに担当部署が分かれているので、各コンポーネントを接続・統合するのに必要な内部的な議論、交渉も、セクションリーダをサポートし一緒にやっています。

プラズマ対向機器、ダイバータについても、単純にくっついていればいい訳ではないので、(冷却)水の取り回しとか、計測器の配線の取り回し、受け入れた製品の保管場所の確保、受け入れテストの責任分担など、コーディネートが必要で、それもメインの仕事の一部になっています。

タングステン・ダイバータチームにも七極全部から人がきていますか? 周囲の理解やサポートは?

こちらの部署では調達を担当するのが、欧州とロシア、日本の三極なので、国民性の理解そして言語の点も鑑みて、担当極出身の方が現地語で細かくコミュニケーションを取りながら、DAと協力して進めています。

日本のDAである原子力機構は、ITERからの要求の本質を正しく理解してサポートしてくれるので、調達としては大変スムーズに進んでいます。またITER側の同僚も理解が早くて、お互いに本質をつかんでいるので、双方が妥協点を探るといったことを含めて、うまく進められています。

ものづくりという視点で新しい視野が広がったとか?

研究開発では何かしら一点物でいいのですが、本格的な製作に入ると大量生産ですので、物を作るための品質管理・工程管理など、研究開発とは違う視点が必要です。研究とは異なる面白味があります。最近の話ではタングステン・ダイバータが決まったことが大きいです。

日本でもITERがタングステン・ダイバータ採用を決めた際の反響は大きかったですが、・・・

ITERではダイバータの調達の他に、ITERタングステンダイバータの設計の責任者をしておりました。1年半という与えられた時間内で設計活動を終え、2013年秋のITER理事会でWダイバータが決まりました。設計担当者としてホッとしたというのが本音です。職務として、我々技術チームは、ITER仕様のデザインをすること、テクノロジーを確立すること、が二本柱でした。

世界中の物理コミュニティやJETなどでの議論の中から上がってくるものは、ITER機構の物理チームがダイジェストにして、技術チームとの議論のテーブルに載せてくれました。これは我々の設計活動とは独立にやってくれていました。うまく物理チームと役割をすみ分けて進めてこられたと思います。

建屋が新しくたちましたね。職員食堂が素晴らしいとか

新しい建屋にみんな入りたがるのですが、ITER職員を優先ということで、外部からのコントラクターの多いうちの部門は旧い建屋に残されています。来年の終わりぐらいに終わる新しい建屋の延伸工事が終わった後に、入ることができるようです。

新しい食堂は、アジア系あり、サラダバーや鉄板焼きなど、実に様々な料理が提供されます。フランス風に少しアレンジされていますが、個人的には大変おいしいと思います。お寿司のパックも用意されています。

例えば、特にロシア料理など分けて出るわけではないのですが、たまにロシアデーなどもあります。ただやはり、母国の料理を好んでとる傾向はあるようです。アジア系の人たちはアジア料理を取ることが多いかもしれません。

日本からをふくめ政治家や王族など要人の来訪も多いのでしょうか?

はい、そんな時はできるだけ出席するようにしています。大変光栄なことに核融合推進議連の代議士方々の他、文部科学大臣の訪問もありました。

モナコのプリンスが訪問された時には、職員のなかから出席者が選ばれ、セレモニーもありました。プリンス向けに、応答演説も特別な言い回しのものになっていました。モナコ・プリンスのお母さんはアメリカ人のグレース・ケリーですから、英語も上手かったですね(笑)。

ITER機構ではたらく日本人スタッフ年齢層が多極よりかなり高いとか?

日本からは経験者が多く来られていて貢献度も大きいのですが、若い人材も必要です。先日何かしらの資料で各参加極の年齢構成のグラフで、日本人スタッフの年齢層が高いのが暗示されてました。今後、若い人の獲得に何らかの動きがあるのかもしれません。日本の場合、若い人がITERで働いた後、日本に帰るポジションが今のところないのが、若い方が日本から参加しにくい理由の一つじゃないでしょうか。私の知っている範囲では韓国、中国、インドは帰るポジションが祖国に保証されているようです。国際プロジェクトでの経験者を国内で取り込んで生かすことはいろいろな意味で国益につながると思います。

話しは変わりますが、現地生活で面白いことは何でしょう?

スキー場が近くにあって、同僚にはしょっちゅう行っている人も多いですね。車で3~4時間も行けば、かなり雪深いところに行けてしまいます。本当のアルプスですから、雄大な自然が堪能できます。もう見えていますから、アルプスのふもとと思っても間違いないです。カダラッシュは、山も海も近い、とても良いところです。

ワインは良く買って飲みます。ロゼがこの辺りは有名で、夏に冷やして飲むので、バーベキューの際には必ず出てきます。赤ワインは夏に冷やすには向かないので、この辺りは、よく冷やしたロゼです。Aix(エクサン・プロバンス)に住まうとアパートになってしまいますが、町の外のITER近郊に住んでいる方は、テラスや庭で夏にバーベキューをやることが多いです。準備が簡単なので。

Aixとマノスクなど近郊の町に住む方は半々ぐらいです。マノスクは最近ITERに伴って拡張を続けています。国際学校があるので、家族でこられる方々が最初に考えられるのがマノスク周辺で、多くの家族連れに選ばれる傾向があります。

私もマノスクに住んでいて、専用バスで通勤しています。車でも普通に通勤できるのですが、特に冬は行き帰りが暗くなり、野生動物の飛び出し事故の可能性がありますので、それを避けるためにも、もっぱらバスを使います(笑)。シカやイノシシなど大型動物を見たことがあります。

外国人に囲まれて生活して感じることは?

フランス人はあまり他人に嫉妬しないとは感じますね。隣人がいい車に乗ったり、収入が良かったりしても、まぁ頑張っているからいいんじゃない、という感じです。日本とはちょっと感覚が違う気がします。出世したい人は出世するだけ働けばいいという雰囲気です。地元の人を見ている限りは、今の生活に満足して、特に頑張ってどうこうしようとは必ずしも思ってないようです。

ITER内の職場でも各国人ごとの違いを感じますか?

個人差もあるので一概には言えないですが、傾向としては確かにありますね。日本人は押しが強くないとか、ロシア人は最初に「ノー」から始まり、フランス人は「イエス」から始まるけど、じつは内容は「ノー」だったり、とかです(笑)。ドイツにいる頃からある程度は理解していましたが、ITERほどたくさんの異なるタイプの人々がいると、改めて気づかされます。

ITERで働いている人達は、国際感覚が豊かだと感じます。国際情勢などの他、食べ物だったり習慣だったりの違いをよく話したりします。クリスマスの祝い方も違って、ロシアは2週間遅れて祝ったり、クリスマスで何を食べるかも各国で違います。国際感覚が豊かというのは、結局、自分の国のことをよく知っているということなので、話をしてもおもしろいんだと思います。自国のことをよく知っていると、相手の国の話も興味を持ってよく聞くことができ、そこからいろいろ議論が広がったります。

本日は、おもしろいお話をたくさんしていただき、本当にありがとうございました。

(2013/12/17、南、中西)