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吉川允二核融合エネルギー奨励賞

過去の受賞者紹介

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平成28年度 吉川允二核融合エネルギー奨励賞 受賞者紹介

ITER計画や幅広いアプローチ(BA)活動などに代表される未来の核融合エネルギーの実現に寄与しうる内外の研究・技術開発や調査研究の中で、若手人材による優れた成果かつ優れた成果が見込まれる活動を顕彰することを目的とした吉川允二核融合エネルギー奨励賞において、以下の受賞対象分野、

① ITERやBAに直接関わる研究開発活動など
② 上記以外で核融合エネルギーの実現に必要な研究開発活動、または将来これらの研究開発に寄与すると見込まれる内外の基礎的・基盤的な研究開発活動など
③ 長期的な視野に立って核融合エネルギーの実用化に向けたシナリオ作成に寄与する調査研究活動など

に対し、平成28年度は、10件の応募がありました(①:3件、②:7件)。選考委員会において厳正な審査を行い、調整委員会は授賞候補2件(①:2件、②:1件)を推薦することとし、運営会議で奨励賞2件が決定されました。授賞式は、第10回全体会合(平成29年2月24日、キャンパスプラザ京都)において執り行いました。

核融合エネルギーフォーラムの推薦に基づいて、受賞者には今後の発展のために研究助成金が国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(量研機構)から配賦されました。

平成28年度の選考委員は次の方々です(敬称略)。

松岡啓介(委員長、核融合科学研究所)、大野哲靖(名古屋大学)、笠田竜太(京都大学)、 春日井敦(量研機構)、鈴木哲(同左)、畑山明聖(慶応大学))、以上6名

受賞者の紹介

研究助成テーマ:

「核融合炉で発生する放射性廃棄物の浅地中処分に向けた検討」

選考理由:

核融合炉の社会受容性の向上を目指した放射性廃棄物の浅地中処分に関する研究で、国内で唯一のものであり、まさに顕彰に値する優れた研究内容である。低レベル放射性廃棄物は核分裂炉に比べて核融合炉の方が多い、また、廃炉時に比べて保守時の交換の方が廃棄物の量が多いが、浅地中処分(コンクリートピット処分:L2)が可能であるという見通しを得ている。ただし、再利用可能なトリチウム増殖材と中性子増倍材は廃棄物から除いている。本計画では、廃棄物となりうる炉内機器について、トリチウムインベントリの評価、トリチウム除染方法の検討を行う。これらは炉内機器設計に必要な運転条件や機器温度管理に関する大事な検討項目である。また、ベリリウムには微量ながらウランが含まれており、中性子捕獲(その後のベータ崩壊)により超ウラン元素が生成される。それらの生成量と放射能濃度が浅地中処分の妨げにならないような対策を検討する。平行して、ベリリウムを使用しないブランケット概念を検討する。避けて通れない課題に対して地道な研究を一貫して継続しており、選考委員全員高く評価した。

奨励賞(研究助成 80万円)
染谷 洋二 氏(量研機構)

受賞者の抱負:

この度は、吉川允二核融合エネルギー奨励賞という名誉ある賞を賜り、大変光栄に思っております。受賞に当たりまして,原型炉設計活動を共に進めております量研機構・核融合炉システム研究グループ員、原型炉設計合同特別チーム員、並びにご協力およびご助言をいただいた共同研究の先生方に、この場をお借りして、感謝申し上げます。核融合炉から発生する放射性廃棄物は、高レベルに区分されるものは無いが世代を超えて長期間の管理が必要になります。また、数年おきの定期保守のたびに放射性廃棄物が発生する原型炉では、運転開始後の比較的早期から廃棄物管理に取り組まねばなりません。この影響は建屋設計や安全性にとどまらず、廃棄物の低減化まで考慮すれば、炉構造、炉内機器、遠隔保守の概念検討にも波及する課題になります。放射性廃棄物対策の取り組みは核融合炉開発の社会受容性を左右する重要な因子と考えており,これら課題を解決するために機器の概念検討も含めた総合的な廃棄物管理処分シナリオ研究を邁進する所存です。今後ともご指導ご鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げます。


研究助成テーマ:

「タングステンと銅合金の先進的ロウ付け接合法による核融合炉用ダイバータ受熱機器の設計・製造技術の開発」

選考理由:

DEMO炉などにおけるダイバータ板の熱処理に関するロウ材による接合の研究であり、内容、申請者の資質ともに優れている。ダイバータ板への中性子束軽減の工夫により、除熱のために熱伝導度のよい銅合金使用の見通しが立った。タングステン(W)と銅合金の溶接による接合は極めて困難なため、ロウ材による接合が採用されている。その際、Wと銅合金の熱膨張率の差による歪を吸収するために、中間材を介したロウ接合が行われているが、中間材をはさむと、機械強度が低下する、除熱性能が落ちる、製造コストが上がるという問題があった。時谷氏は、中間材を用いない接合法を開発し、実用化につながる成果を上げた。銅合金は酸化物分散強化銅(ODS-Cu)のGlidCop®、ロウ材はBNi-6である。これまでに、200MPaを越える機械的強度に耐え、8MW/m2の定常熱負荷の下で表面直下のW内部温度は350℃程度に抑えられている。本計画では、ロウ付け接合部の組織観測を行い、材料学的な検討を加える他、20MW/m2までの試験を行い、大規模ダイバータ試験体の設計を行う。核融合炉におけるチャレンジングな課題に対する特筆すべき成果として選考委員全員高く評価した。

奨励賞 (研究助成 80万円)
時谷 政行 氏(核融合科学研究所)


受賞者の抱負:

この度は平成28年度吉川允二核融合エネルギー奨励賞という栄誉ある賞を頂きまして、誠にありがとうございます。共同研究者および関係者の皆様方のご協力に深く感謝申し上げます。今回の受賞内容は「タングステンと銅合金の先進的ロウ付け接合法による核融合炉用ダイバータ受熱機器の設計・製造技術の開発」です。本研究では、ダイバータヒートシンクに酸化物分散強化銅(ODS-Cu)を用いることとし、タングステンとODS-Cuの直接接合に最適なロウ材と熱処理法を見出しました。この先進的ロウ付け接合法では、接合界面に200MPaの強度を有する靭性が発現することを確認しました。一般的には,タングステンと銅合金は熱膨張係数が異なるため,ロウ付け接合時に純銅などの中間層を用いることが多いですが、同接合法では、接合界面に発現した靭性の効果により中間層は必要ありません。この事実は、熱伝導率の確保や製造コストの削減などの観点から大きな利点となります。同接合法による小型ダイバータ試験体の製造に成功し、定常熱負荷試験で高い除熱性能も確認されています。今後は、接合界面の靭性発現機構の詳細を原子レベルで明らかにし、実規模ダイバータの設計・製造に着手する予定です。本研究で確立させた設計・製造技術を通じて、核融合炉ダイバータの開発に貢献したいと考えています。今後ともご指導御鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。


研究助成テーマ:

「高エネルギー粒子による波と不安定性の効果を考慮したJT-60SA高ベータ実験シナリオ開発」

選考理由:

ITERおよびBAの枠内のJT-60SA実験を成功に導くための理論・シミュレーション研究であり、内容、申請者の資質ともに優れている。高エネルギー粒子とバルクプラズマ中の波(アルフベン波など)との相互作用に焦点を当て、汎用コードと解析手法を開発し、成果を上げてきた。この相互作用はα加熱がキーポイントであるITER燃焼プラズマにおいて本質的な役割を果たす。開発したコードや手法を用いてJT-60Uのプラズマをシミュレーションした結果、高速イオンが駆動するシアアルフベン不安定性がイオン音波と結合することを発見した。アルフベン波のエネルギーがイオン音波に変換されると、ランダウダンピングを通して、バルクイオンの加熱に寄与する可能性がある。ITERとDEMOの橋渡しの役割を演ずるJT-60SAは強力なNBIによって高ベータプラズマ(ITER以上のβN)を数10秒間生成する予定であり、Bierwage氏はビームイオンのプラズマ平衡、MHD不安定性、アルフベン不安定性に及ぼす影響を予め詳細に調べることにしている。本計画では、これらの課題について、国内外の共同研究を通して従来にない信頼性をもって解析し、JT-60SAのシナリオ5(高β平衡)と呼ばれる研究計画を充実させる。JT-60SA高βプラズマの生成・解明に大いに期待をもたせるものであり、選考委員全員高く評価した。

奨励賞 (研究助成 70万円) ビアワーゲ アンドレアス(BIERWAGE ANDREAS) 氏
(量研機構)


受賞者の抱負:

I am very honored to be awarded the 2016 Masaji Yoshikawa Prize for Fusion Energy. First of all, I would like to take this opportunity to thank my teachers, supervisors and collaborators to which I am highly indebted for their patient guidance and support over many years. Moreover, I would like to acknowledge everyone involved in administering the Fusion Forum and the Yoshikawa Prize for their efforts in fostering, encouraging and rewarding advances in fusion science. The success of the international and domestic fusion program, including ITER and JT-60SA, still depends critically on new breakthroughs in basic plasma science and technology. These may sprout unexpectedly any moment, just like the results for which I am receiving this award. Such discoveries require time for free thinking and creativity. I myself am very lucky to still have that freedom. But around me, I see much scientific potential buried under administrative duties. My hope for the near future is that all scientists will be allowed to spend more time with creative research and less time with administration. This should amplify our productivity and increase our chances to discover whatever is necessary to make controlled fusion power plants a reality.