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吉川允二核融合エネルギー奨励賞

過去の受賞者紹介

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平成23年度 吉川允二核融合エネルギー奨励賞 受賞者紹介

ITER計画や幅広いアプローチ(BA)活動などに代表される未来の核融合エネルギーの実現に寄与しうる内外の研究・技術開発や調査研究の中で、若手人材による優れた成果かつ優れた成果が見込まれる活動を顕彰することを目的とした吉川允二核融合エネルギー奨励賞において、以下の受賞対象分野、

① ITERやBAに直接関わる研究開発活動など
② 上記以外で核融合エネルギーの実現に必要な研究開発活動、または将来これらの研究開発に寄与すると見込まれる内外の基礎的・基盤的な研究開発活動など
③ 長期的な視野に立って核融合エネルギーの実用化に向けたシナリオ作成に寄与する調査研究活動など

に対し、平成23年度は13件の応募がありました(①:5件、②:7件、③:1件)。選考委員会による慎重かつ公正な審査を経て調整委員会で受賞5件(①:1件、②:3件、③:1件)を採択し、運営会議の確認を経て、優秀賞2件、奨励賞3件が選考されました。授賞式は、第5回全体会合(平成23年12月27日、学士会館)において、平成22年度の授賞式と合同で執り行いました。

核融合エネルギーフォーラムの推薦に基づいて、受賞者には今後の発展のために研究助成金が(独)日本原子力研究開発機構(以下、原子力機構)から配賦されました。

平成23年度の選考委員は次の方々です(敬称略)

岡野邦彦(委員長、電力中央研究所)、朝倉伸幸(原子力機構)、中村幸男(核融合科学研究所)、福山淳(京都大学)、南貴司(京都大学)、室賀健夫(核融合科学研究所)、以上6名。


左側:岡野邦彦(選考委員長)、受賞者(3名)、
吉川允二氏(中央)・核融合エネルギーフォーラム議長(中央)、
受賞者(3名)、右側:堀池寛(選考委員長)

受賞者の紹介

研究助成テーマ:

「セラミック薄膜中の水素同位体透過挙動の解明と成膜手法の高度化」

選考理由:

多層のセラミックス薄膜の生成によるトリチウム透過防止に関する基礎研究である。トリチウムの取り扱いはITERにおいても喫緊の課題である。セラミック薄膜におけるトリチウム透過挙動と透過防止性能における実績は若手研究者として大変立派であり、それをもとに、今後の取り組みが具体的に示されている点も高く評価された。

優秀賞 (研究助成 80万円)
受賞者: 近田 拓未 氏(東京大学)

受賞者の抱負:

この度は、栄誉ある吉川允二核融合エネルギー奨励賞の優秀賞を賜り、身に余る光栄です。受賞対象となった研究は、学生時代から取り組んできた内容を基礎にしており、ひとえに指導教員の先生方や共同研究者、関係者の皆様のご支援の賜物と深く感謝申し上げます。ブランケット領域におけるトリチウムの透過漏洩を薄膜で低減する技術は1970年代から検討されてきましたが、未だ使用材料と成膜手法の確立には至っておりません。その要因として、開発の側面が重視され、現象の解明が二の次とされてきたことが挙げられます。本研究は、これまで丁寧に積み重ねてきた基礎的な知見を基に、過酷な環境で使用されるトリチウム透過防止膜の特性を多層構造の各層に分配して付与しようとするものです。このような実用化を見据えた複雑な研究ではありますが、学術としての視点を忘れることなく、多層膜界面における水素の挙動などの基礎物理の解明を軸に取り組むことで、普遍的な理解を目指したいと考えています。本賞を大きな励みにして、核融合炉の早期実現に向けて核融合炉工学およびトリチウム工学研究に邁進する所存です。今後ともご指導ご鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げます。


研究助成テーマ:

「乱流による大域的な輸送現象とプラズマ流の形成過程との因果関係に関する研究」

選考理由:

乱流計測技術の発展と乱流抑制機構の解明に優れた実績があり,本研究はそれらを発展させ、プラズマ流の発生機構を小型プラズマ装置で観測しようというもので、将来展開としては、大型装置の閉じ込め改善や自己回転誘起などの解明に繋がる研究といえる。実験計画においては、計測する物理量との対応や計測法の改良など具体的に示されている点も高く評価された。

優秀賞 (研究助成 80万円)
受賞者: 永島 芳彦 氏(九州大学 )

受賞者の抱負:

この度は、吉川允二核融合エネルギー奨励賞を授与して頂き、誠に有難うございます。本賞の受賞は、特に核融合研究への貢献という観点から、核融合研究を志す我々若手研究者にとって最大の栄誉です。これまでの研究では、乱流輸送の局所性と大域性について解明するため、観測器を方位角方向に万遍なく並べ乱流輸送の一次元的(方位角方向)な振舞を実測いたしました。本研究では、さらに観測を径方向に拡げて2次元的な観測を行うことで、乱流輸送の径方向の勾配を測定し、大域的プラズマ流の駆動機構について大域的な乱流輸送(レイノルズ応力・粒子輸送・高次の輸送量)の各成分を分離して評価する、世界で初めての観測の実現を目指すものです。この実験により乱流による大域的プラズマ流生成の動的な起源を探り、帯状流の生成機構やプラズマの自発回転の機構について最新の知見を与えられると考えております。本研究の端緒は、私が大学院の学生であった時の東京大学と日本原子力研究所との共同研究でありました。その後九州大学・核融合研で大きく発展し、ここまで10年以上が経過しました。その間ご助力いただいたすべての方に感謝申し上げます。今後も本研究を通じて核融合発電の実現及び我が国や世界のエネルギー問題の解決を目指し、努力してまいる所存です。


研究助成テーマ:

「第一壁・ダイバータ材料の再表面領域における力学特性」

選考理由:

核融合プラズマにさらされたタングステンの特性予測の研究は、原型炉設計にとって必要なのはもちろんだが、ITERにタングステンを入れる以前に評価方法を確立しておく必要もあり、本研究の目標であるタングステン材料の特性評価手法の開発は、早期の実施が望まれる重要な課題である。これまでの鉄系材料での経験を生かして、タングステンの力学特性評価に取り組む具体的な実験計画も高く評価された。

奨励賞 (研究助成 25万円)
受賞者:笠田 竜太 氏(京都大学)

受賞者の抱負:

この度、栄えある核融合エネルギー奨励賞を受賞することを大変光栄に思っております。振り返ると齢十の頃に星々の煌きの源に興味を持ち、東海村にて核融合炉研究に出会ったことが私の研究者としての原点でした。その後、学生時代より耐照射性材料の研究開発に携わり、核融合炉の実用化に向けて悠然と歩んで参りました。しかし、福島第一原発の事故は、私の生き様に対しても多大な影響を与えたようです。陳腐な結論ですが、人を明るい将来に向かって動かす駆動力は「夢」であると改めて思い至ったのです。今回の受賞を機として、核融合炉実用化という夢に向けた飛躍の一歩を踏み出すとともに、続く若手に大きな夢を繋ぎたいと思います。本研究は、BA活動等を通して鉄基材料を対象に開発した極表面機械特性評価モデルに基づくナノインデンテーション法により、イオン照射或いはプラズマ曝露したタングステン材料における数μm程度の最表面領域の機械的特性をバルク相当特性として評価し、ITERの機器保全や原型炉の設計に資することを目的としています。実験のスケールは極めて小さなものですが、核融合炉のキーテクノロジーである第一壁・ダイバータ工学上重要な課題であるとともに、幅広い応用が見込まれる研究でもあります。今後の展開にご期待ください。


研究助成テーマ:

「確率論的手法を用いた磁場閉じ込め環状プラズマ中に形成される構造の安定性評価」

選考理由:

磁場閉じ込めの輸送解析に確率的アプローチを行う新しい流れを提案している。応募者はヘリカルプラズマの非局所輸送に関して多くの発見を行っているが、本研究では、ヘリカルプラズマの研究が物理を通してトカマク型装置にも貢献可能であることを示した価値が高く評価された。

奨励賞 (研究助成 25万円)
受賞者:田村 直樹 氏(核融合科学研究所)

受賞者の抱負:

この度は、名誉ある吉川允二核融合エネルギー奨励賞を頂き、誠にありがとうございます。今回受賞の対象となりました研究を支えて頂いております核融合科学研究所や国内外の大学・研究所の先生方及び共同研究者の皆様に心より感謝申し上げます。乱流輸送が支配的な磁場閉じ込め環状高温プラズマでは、L-modeからH-modeへの遷移や電子系内部輸送障壁の形成など、多様な分布構造形成が観測されています。外部制御パラメータが限定された高自律系である核燃焼プラズマにおいても好ましい分布構造を省力的かつ効率的に形成、維持するためには、その制御性、安定性についてしっかりと知見を深めておく必要があります。今回、磁場閉じ込め環状プラズマ中に形成される分布構造の安定性の定量的評価手法として、磁場閉じ込め環状プラズマの閉じ込め状態の確率論的評価手法の有効性を検証する研究を計画しました。その有効性を示すことができれば、核融合炉の運転シナリオ作成が容易になると予想でき、より経済的な核融合炉設計にもつながると期待されます。今回、本奨励賞を授与されたことを大変誇りに思うと同時に、核融合エネルギーの早期実現に向けて本研究を発展させていく所存です。


研究助成テーマ:

「トカマク型核融合炉による原型炉設計基盤の高度化と原型炉開発シナリオへの影響評価」

選考理由:

概念設計での経験を生かし、原型炉を実現するための課題を、もう一度見直そうとする内容となっている。関心が高まっている核融合炉の安全性に取り組んでいることも評価された。また、応募者の仕事は原型炉設計開発研究へ多くの新しい知見を与えており、その貢献も高く評価できる。

奨励賞 (研究助成 25万円)
受賞者:日渡 良爾 氏(電力中央研究所)

受賞者の抱負:

この度は、吉川允二核融合エネルギー奨励賞を頂き誠にありがとうございます。小生はこの10年、原型炉を対象とした核融合炉概念構築を中心に研究を進めて参りました。原型炉概念構築の難しさは、「実用化に向けた技術的・社会経済的に最適なミッションの設定」と「それを実現するための技術選択・システム統合」にあると考えております。これまでの日本の原型炉は、経済性向上が最重要課題とされてきましたが、何を重要視するかは時代によって変わるものです。東日本大震災によって安全性に重きを置く概念構築が求められるのは必須の状況であるものの、日本の原型炉に対する安全検討は十分といえる状況ではありません。今後、安全に対する設計方針の検討、それに対応する原型炉概念の再構築が必要になってきます。その様な今後の原型炉概念検討に向け、少しでも貢献できるよう、引き続き研究に邁進していきたいと考えております。今回の吉川允二核融合エネルギー奨励賞応募にあたり、推薦いただきました先生方、さらにはこれまでに共同研究等でご指導・アドバイス頂きました皆様に対しまして、心よりお礼申し上げます。引き続きご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。